「親密派」(仏、英=アンティミズム)。もとの形容詞「intime(親密な、内的な)」の語義どおり、日常的な題材、とくに室内の情景を通して画家、あるいは対象物の内面的な世界が一種の情緒となって醸し出されているような絵画傾向を指す。美術批評における用語としては19世紀末から20世紀初頭にかけて、広く17世紀オランダ風俗画から同時代のサロンの室内画まで含む絵画傾向を指す言葉として使われはじめた。ひとつの明確な絵画傾向としてこれを取り挙げたのはフランスの批評家C・モークレールが最初とされる。一般的には、世紀転換期に一連の室内情景画を描いたナビ派のヴュイヤール、ボナールなどが代表的画家として挙げられる。この場合、題材からいえば風俗画という美術史上の伝統的ジャンルに帰着するが、主題や逸話よりも造形性によって内的感覚を喚起させるという美学からは、世紀末の象徴主義の流れを強く汲むものといえる。
(陳岡めぐみ)
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