人力や風力、あるいはモーターなどで動く部分をもった彫刻の総称で、その運動を動力に依存することに因んで、ダイナミズム(動力学)の一部をなすキネティックの名が与えられた。自転車の車輪をスツールに搭載したM・デュシャンの作品《自転車の車輪》(1913)やL・モホリ=ナギの彫刻(1920年代)にそのルーツを辿ることができるが、その後この様式は、A・カルダーの「モビール」を経て、60年代のヨーロッパで全盛期を迎えた。傾向としては、システマティックな造形思考を内包したモホリ=ナギ的なものと、機械文明に対する批評性を含んだデュシャン的なものとに大別され、自動制御装置を内蔵したモニュメントを制作したN・シェフェール、光と動力を活用したJ・ル・パルクらは前者の、「ジャンク・スカルプチャー」のJ・ティンゲリーは後者の代表的な作家である。この動向は、ヴィデオやコンピュータを活用したその後のハイテクアートの先鞭をつけるものであった。
(暮沢剛巳)
関連URL
●デュシャン http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/m-duchamp.html
●モホリ=ナギ http://www.geh.org/fm/amico99/htmlsrc2/
●カルダー http://www.calder.org/
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