版画技法の一種。版式では木版と同じ凸版技法に分類される。版材には建築材料に使用されるリノリウム板を用い、板目木版画用の彫刻刀で彫版する。版材が安価で大きなサイズが容易に入手でき、また、材質が木材に比較して柔らかく板目の制約を受けないため、どの方向にも抵抗なく彫ることが可能で、欧米では戦前、美術教育用の技法として流行した。この技法がアーティストによって真剣に試みられるようになったのは、1930年代後半にH・マティスと、つづいてP・ピカソが取り上げてからのこと。とくにピカソは、1958年から本格的にリノカットに取り組み、《女の胸像》(1958)、《牧神と山羊》(1959)、《帽子をかぶる女の胸像》(1962)など、1963年までに100点以上の作品を完成させている。
(木戸英行)
関連URL
●ピカソ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/p-picasso.html
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