政府や企業による「文化の擁護」の意味。ローマ帝国で文化擁護政策を行なった政治家マエケナスの名を語源とし、歴史的にはメディチ家によるパトロネージ等を指すが、現在ではもっぱら企業による芸術文化支援活動に対して使われる。
メセナ活動には各地域の歴史が反映されており、アメリカでは国家成立以前からの民間文化振興が「企業市民性(コーポレート・シティズンシップ)」を意識した「フィランソロフィー」の確立へと発展したのに対し、ヨーロッパでは支配階級の「チャリティー」精神を礎とした、企業メセナ団体への政府による資金提供や統括・再分配制度(英国のABSA[芸術助成民間協議会]等)が見られる。日本で「メセナ」という語が定着した背景には1980年代の日仏企業交流がある(同様に日米関係から「フィランソロフィー」がもたらされた)。1990年に発足した社団法人企業メセナ協議会は、企業メセナの普及・交流・調査・顕彰・助成といった活動を行ない(1998年現在正会員168社、準会員42団体)1995年には東京で世界初の国際メセナ会議を開催した。企業メセナ勃興の背景には寄付に対する控除という税制上のメリットという点があったが、1998年3月には法人格の付与による活動の発展促進を目的とした特定非営利活動促進法(NPO法)が成立した。一般に文化行政に対してメセナという語は使われないが、こうした優遇措置がきわめて間接的な意味での政府メセナ(文化擁護)であるという見方もできる。
(三本松倫代)
参考文献
●『メセナ白書』([社]企業メセナ協議会編、ダイヤモンド社、1991−)
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