1920年代より、メキシコ革命(1910−17)を讃える目的で、メキシコ政府の主導により大規模なフレスコ画が数多く制作された。J・C・オロスコやD・リベラ、D・シケイロス等がそれに携わった代表的な作家である。彼らは社会主義的思想を人民に広めるため、主として公共建築の壁面にメッセージ性の強い巨大な作品を描いた。また、彼らはメキシコの誇る文化遺産であるアステカ文明を意識し、その土俗的様式を積極的に取り入れている。しかし、30年代になると政府との対立から、オロスコ、リベラは海外に向かい、特にアメリカで制作を続け、アメリカ政府の連邦美術計画に関与した。彼らの作品やメキシコに残ったシケイロスの著書『壁画の描き方』(1951)に影響を受けて、アメリカ抽象表現主義の大規模な作品は制作されている。
(苅谷洋介)
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