単純な規則性をもった音列の反復によって構成される音楽。ひとつのスタイルとしては、1960年代にアメリカを中心に展開した。代表的な作曲家に、テリー・ライリー、ラ・モンテ・ヤング、スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラスがいる。「ミニマル」の呼称は同時期に活発だった美術の傾向、「ミニマル・アート」から取られているが、この二つの直接的な影響関係はあまりない。例えばラ・モンテ・ヤングは、むしろフルクサスのパフォーマーである。一般にミニマル・ミュージックの作品は、単純なフレーズの反復によってなりたつと同時に、メロディアスでリズミカルなものである。そのため、「無調」だから「難解」とされる現代音楽のなかでは、例外的に「聴きやすい」ものとなっている。この聴きやすさは、これらの作曲家がジャズや民族音楽など、ポピュラー・ミュージックのイディオムを積極的に取り入れたこととも関係する。60年代のカウンター・カルチャーの影響も見逃せない。だから、90年代に入ってテクノ・ミュージックがスティーヴ・ライヒを再発見したことは、すこしも驚くにあたらない。
(林卓行)
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