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『芸術世界(ミール・イスクーストヴァ)』 Mir Isskustva


バレエ・リュスの主宰者となったディアギレフが主宰していた芸術総合誌。ロシアだけではなく、西欧各国にも購読者を持っていた。1898年に創刊され、1904年に廃刊。創刊の翌年1899年からは雑誌主催の展覧会も開催され、大きな話題となった。創刊号のマニフェストでディアギレフは美術アカデミーに反旗を翻し、芸術至上主義を宣言した。この雑誌は展覧会評はもとより文学、芸術に関する書の書評、バレエや演劇、コンサートの批評、西欧すべての美術界のイヴェントを網羅した情報などの紹介まで幅広い記事が掲載されていた。ディアギレフは印象派や後期印象派を誌上及び展覧会で初めてロシアに紹介したが、その一方で自国の若手画家の紹介も精力的に行なった。特にマーモントフのアブラームツヴォの工房、ロシア美術工芸運動、スカンジナヴィアの絵画などを重視した。また、内容もさることながら、当時の雑誌では考えられなかった大きさと手すき紙による豪華な装丁も話題となった。編集にはブノワ、バクスト、セローフら後のバレエ・リュスの協力者たちが携わっていた。1902年ごろからはディアギレフの多忙もあって、ブノワと交互に編集を行なうようになった。劇作家アントン・チェーホフに編集を依頼したこともあったが、それは実現することはなかった。この雑誌でディアギレフはイラストレーターを発掘登用し、ロシアの画家を表舞台に連れ出し、西欧の芸術を紹介したが、これらの活動は後のバレエ・リュスでの彼の活躍の基礎ともなっている。

(芳賀直子)


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