辞書的な定義に倣うなら、「モダニズム」とは時代を問わずに「現代の……」を意味するはずだが、美術史上の「モダニズム」は19、20両世紀にまたがる一時期へと限定され、その連続性は語義上存在しないはずの「ポストモダニズム」として語られるようになった。A・ランボーが前近代的な旧套を打破すべく「絶対にモダンでなければならぬ」と書きつけてから一世紀余、いまや「モダニズム」そのものが打破されるべき旧套と化してしまった観がある。多くの論者は、こうした「モダニズム」の変遷の理由を「フォーマリズム」のなかに求めてきた。芸術の自律性と純粋性を追究したこの様態が、極点に達した後「モダニズム」も硬直化を余儀なくされたというわけだが、ここで語られているのはむしろ「狭義のモダニズム」と呼ぶべき物語だろう。「フォーマリズム」という限定された形式に「モダニズム」のエッセンスを見出す態度は、他の領域では見られない美術特有の現象である。今後の課題はおそらく、「フォーマリズム」の核心を再検討し、かつその枠組みのなかにつきない「モダニズム」の可能性を追究することである。
(暮沢剛巳)
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