線、面、マッス、色彩、テクスチャー等の絵画の形式的な要素を画面に配置することによって、観者の視線を誘導して生じさせる運動感のこと。線や平面及びマッスの互いの位置や緊張関係において、また色彩やテクスチャーによる効果によって、二次元的なムーヴマン、三次元的なムーヴマン、さらに円環的なムーヴマンを作り出す。ルネサンス以降の幾何学的な遠近法によると、線、面、およびマッスが、絵画空間の奥行きに向かって漸次縮小していき、また、大気遠近法により、奥の空間に進むほど色彩が次第に薄く塗られるのに対し、三次元的なまたは円環的なムーヴマンに従って感じられる空間の奥行きは、これらの遠近法のルールに則ることなく、絵画空間を創出しようとする試みであると考えられる。
(安藤智子)
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