1994年、岡山県にある人口7300人余りの小さな町、奈義町に開館した現代美術館。大地、太陽、月を象徴するという3つの展示スペースにそれぞれ、京都の龍安寺の石庭をモチーフにした荒川修作・マドリン・ギンズの作品《遍在の場・奈義の龍安寺・心》、ワイヤーが中空に軽やかな曲線を描く宮脇愛子の作品《うつろひ》、広い三日月型の空間に有機的な形態の突起物を取り付けた岡崎和郎の作品《Hisashi――補遺するもの》が、半永久的に展示されている。これらの作品はすべて、空間全体を作品として提示するインスタレーションで、磯崎新設計の建物と一体化している。また建物は、中心軸がこの町名の由来ともなった那岐山の山頂に向かうなど、三本の軸線により構成され、位置が決定されている。磯崎の提唱する第3世代の美術館の代表例である。現代美術の主要な流れを総花的に収集、展示する美術館とは一線を画し、逆に非常に個性的な美術館を目指すことで成功している。
(鷲田めるろ)
関連URL
●奈義町現代美術館 http://www.town.nagi.okayama.jp/moca/
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