ヨーロッパ全土を戦火にさらした第一次世界大戦。とりわけドイツにおいては、厭戦感と敗北感に起因する冷笑的・忍従的な雰囲気が支配的で、そうした時勢に対応する新しい動向が生まれつつあった。その代表的な担い手はM・ベックマン、O・ディクス、G・グロスらだが、1923年、彼らの作品を集めた展覧会を組織したマンハイム・クンストハレの館長G・F・ハートラプは、当時の国際的流行であった反抽象主義に同伴しつつ、ドイツ的な感受性の顕著な彼らの傾向を「ノイエ・ザッハリッヒカイト」と命名、大戦後の新傾向をいち早く先取りした。そのマニフェストでは、彼らの作品を「リアリズム」と位置付けているが、反=抽象的と呼ぶほうが相応しい彼らの作風の定義としては必ずしも適切とは言えず、ハートラプがうたった「ノイエ・ザッハリッヒカイト」の精神は、むしろその後F・ムルナウやF・ラングらの映画などで発揮されるようになる。
(暮沢剛巳)
関連URL
●M・ベックマン http://www.artchive.com/artchive/B/beckmann.html
|