「新しい絵画」。1980年を前後して登場した新しい絵画の動向を総称していう用語だが、その指示する範囲があまりに漠然としており、今日では「ネオ・エクスプレッショニズム」と呼ばれることのほうが多い。巨大なキャンヴァス、荒々しい筆致、原色の対比などの特徴は、70年代に隆盛を極めた禁欲的な絵画や「コンセプチュアル・アート」と明確な対照を為しているが、「ニュー・ペインティング」の担い手として登場した作家の大半がちょうどこの時期に美術教育を受けたことを思えば、この動向は明らかにモダンからポストモダンへの移行と伴走する世代交代であったと言えよう。この動向の旗手としてよく名が挙げられるのは、J・シュナーベルやJ・ボロフスキー、あるいは「トランスアヴァンギャルディア」や「ツァイトガイスト」へと関わった作家たちだが、仮に存在するとしても、彼らの多様な作風を結びつける関係性は極めて緩やかなものでしかありえない。
(暮沢剛巳)
関連URL
●J・シュナーベル http://www.artcyclopedia.com/artists/schnabel_julian.html
|