印刷・版画技法のうち平版技法の一種。原理的にはリトグラフと同じく水と油の反発作用を利用して同一平面上に描画部と非描画部の両方を形成するが、オフセットでは、版面に着肉したインクをいったんブランケットと呼ばれるゴムの圧胴に転写し(off)、これを介して用紙に刷り取る(set)。オフセット・リトグラフィーは写真製版を用いたフォト・メカニカル・オフセット・リトグラフのことを指し、現在、大量高速印刷の商業印刷ではもっとも一般的に使われている技法。その製版法は、まず感光乳剤を塗布した金属版に、画像のポジ・フィルムを露光・現像して感光部(非描画部)を硬化させる。つぎに酸溶液に浸して描画部を肉眼では視認できないほど浅く腐蝕させた後、薬品処理で描画部の感脂化と非描画部の親水性を強化して刷版とする。この製版法では描画部の感脂膜が強く、また、版面に焼き付ける画像フィルムはコンタクト・スクリーンを介して濃淡の階調を微細な網点の密度の違いに変換してあるため、階調の再現が安定し、数万部という大量印刷が可能である。
(木戸英行)
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