L・スタインバーグが提示した概念。彼は1968年に発表した同タイトルの論文において、当時アメリカの美術批評を席巻していたC・グリーンバーグのフォーマリズム批評の評価基準を批判し、「他の評価基準」を提示した。美術史的知見を踏まえつつなされるスタインバーグの批判は、グリーンバーグの「イリュージョン」概念やカントの援用によって強調される自己限定という契機が、自らの評価基準に合わない作品の規範的な禁止や拒絶を導くものであるとする。そしてR・ラウシェンバーグやJ・デュビュッフェの作品を平台型絵画平面として特徴づけ、絵画平面が垂直から水平へと移行し、情報マトリクスの操作面となると述べた。この論文はスタインバーグのJ・ジョーンズ論とともに、具体的なアーティスト評価と連動して、フォーマリズム批評の相対化を推し進める結果となった。だが、批評における判断が、果たして選別と排除なしに遂行されうるのか、という問いが残るだろう。「他の評価基準」という問題提起が、単なるフォーマリズム批判という時局性を超えうるものであるかどうかは、この問いの展開にかかっているように思われる。
(石岡良治)
関連URL
●ラウシェンバーグ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/r-rauschenberg.html
●デュビュッフェ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/j-dubuffet.html
●ジョーンズ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/j-johns.html
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