略称「PC」。本来は最近のアメリカのアカデミズムにおける、1968年の大学紛争世代が中心となった“政治的に正しい”ことを標榜した旧套打破の運動を示す用語。美術における「ポリティカル・コレクトネス」も、同様の観点から西洋中心主義や男性中心主義を批判する傾向を指す。具体的にはV・バーギン、H・ハーケ、S・レイシーらの作家、あるいはグループ・マテリアルやゲリラ・ガールズのようなグループの活動にそうした“政治上の”特徴を認めることができるが、じつのところ彼らの活動も、作品の売買や展覧会への参加など、自らが批判する美術の社会的諸制度に依存しなければ成立しない面があり、理念の十全な実現は極めて困難である。政治的な芸術というと、例えば旧ソ連の革命プロパガンダ芸術などが思い浮かぶが、今日「政治的に正しい」立場から擁護すべき弱者はプロレタリアートからマイノリティへと移行しつつあり、芸術と社会の緊張関係も当然のように変化している。「ポリティカル・コレクトネス」はその最も現代的な指標にほかならない。
(暮沢剛巳)
関連URL
●V・バーギン http://www.imago.univ-paris8.fr/imago/levoyeur/old/lv6/burgin.html
●H・ハーケ http://dialnsa.edu/iat97/Sculpture/haacke.html
●S・レイシー http://www.sla.purdue.edu/WAAW/Cohn/Artists/Lacystat.html
●ゲリラ・ガールズ http://www.guerrillagirls.com/index.html
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