1960年代後半に流行した、派手な原色や蛍光色を多用したデザインの総称。そもそもは、アメリカの思想家T・リアリーが、ギリシア語の「精神(psyche)」と「目に見えること(delos)」とを組み合わせて作った造語であり、マリファナやLSDによる夢幻的な幻覚体験について述べた主著『サイケデリック体験』(1965)は、ヴェトナム戦争の泥沼化で厭戦気分が漂い、現実逃避を願う当時のアメリカの若者から圧倒的な支持を受けた。デザインとしての「サイケデリック」も、当然その夢幻的な体験を表現するものであり、ポスターやファッションなどの領域で、派手な極彩色を用いたデザインが若者の間で流行した。この流行は間を置かず日本にも飛び火し、「サイケ調」と呼ばれるデザインが瞬く間に広まったが、その発信拠点が、東京・赤坂に所在した2つのディスコであったことはデザイン関係者の間で広く知られている。ひとつは、黒川紀章、粟津潔らの設計による「スペース・カプセル」、もうひとつは浜野安宏、藤本晴美らの「ムゲン」で、ブラックライトやストロボを多用したその室内照明は、当時の「サイケ調」の雰囲気をそのまま体現していたのだった。
(暮沢剛巳)
関連URL
●黒川紀章 http://www.kisho.co.jp/
●粟津潔 http://www.dnp.co.jp/gallery/artist/awazu/awazu.html
●藤本晴美 http://www.shiseido.co.jp/s9807frn/html/frn906t0.htm
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