「純粋主義」。1918年から25年の短期間、フランスで展開された絵画運動。この運動を喧伝したC=E・ジャンヌレとA・オザンファンの二人は『キュビスム以後』(18)というマニフェストを表わし、主観主義に陥ってしまったキュビスムを批判し、その名の通りより機能性が純化された絵画の必要性を力説した。作品自体は、精密で明快な画面と、幾何学的な空間性を特徴とし、雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』を通じたプロパガンダなども併せて、そのユートピア的、有用的な志向性は同時代の「デ・ステイル」や「ロシア構成主義」などとも多くの共通点をもつ。画家ジャンヌレが21年以降ル・コルビュジエを名乗る建築家へと転身したこともあり、短命だった「ピュリスム」の絵画運動は広範な影響力をもちえなかったが、その理念は後のル・コルビュジエの建築やデザインに十全に発揮されたことで、後年「ピュリスム」もあらためて評価されることになった。「デ・ステイル」のT・ファン・ドゥースブルフが、ル・コルビュジエをライバル視していた事実も、「ピュリスム」をめぐるエピソードのひとつである。
(暮沢剛巳)
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