「関係性の芸術」。アートを日常性と対立したものではなく、相互に依存し、また制作のモチベーションにも不可欠な関係にあるとみなす立場、もしくはその立場によって生み出される作品の通称。表現上のスタイルよりも、作品が作り出される目的やコンテクスト、さらには作品の公共性のほうを重視する。1990年代の後半、フランスのF・ブリオーとドイツのH・U・オブリストという二人のキュレーターによって提唱され、彼らが企画を担当した国際展などを通じてその考え方の是非が問われることとなった。彼らの提言の背景には、インターネットの急速な普及に伴うボーダレスな情報環境の出現があり、それゆえ必然的に、L・ティラヴァニヤ、P・ユイグ、V・ビークロフトなどボーダレスな活動を展開している作家がこの立場の代表者とみなされる。だが作品と社会の関係を重視するその姿勢は、1960年代のフルクサス、あるいは1970年代のコンセプチュアル・アートからの影響も認めることができるだろう。派生的に「リレーショナル・デザイン」「リレーショナル・アーキテクチャー」と呼ばれる場合も、作品の質的判断以上に、作品の日常性との関係性を重視するその本質は同様である。
(暮沢剛巳)
関連URL
●L・ティラヴァニヤ http://adaweb.walkerart.org/context/artists/tiravanija/tiravanija2.html
●P・ユイグ http://www.jpf.go.jp/yt2001/cyber/artist/048_Huyg/
●V・ビークロフト http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/artscape/topics/9904/ichihara/ichihara.html
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