平面を浮き立たせるように彫りこむか、平面上に形を盛り上げて肉づけした彫刻。建築物や工芸品の表面を飾るために用いられた。形態が背景より突き出した陽刻ではその浮き出しの程度によって高浮彫、中浮彫、浅(低)浮彫、(リリエーヴォ・)スキアッチャート(超薄肉浮彫)の区別がある。反対に対象の部分を背景より窪ませる陰刻という技法もあり、それに類するものとして対象の輪郭線の内部を窪めて彫り、さらにその内部を浮彫状に肉づけする沈め浮彫や肉合彫、インタリオなどがある。沈め浮き彫りは古代エジプトで用いられたが、この技法は遠く離れた地点からでも観る者に鮮明な印象を与えるという利点があった。レリーフは古代から行なわれており、特にアッシリア美術の連続した浅いレリーフのフリーズはアッシュールバニパル王(在位、紀元前668−627)のニネベ宮殿の装飾において頂点に達した。(リリエーヴォ・)スキアッチャートは15世紀、ドナテルロが創始したものと言われており、ルネサンスで好まれた技法である。これにより高浮彫では不可能な線遠近法を使った奥行き感のある表現や、浮き彫り面に微細な波立ちを作ってかすかな光を捉え、絵画においてさえ不可能とされていた大気表現の効果を表わすのに成功した。
(山口美果)
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