アメリカ東海岸のシェーカー教徒によって独自の発展を遂げたデザインおよびその原理の総称。シェーカー教はイギリスからアメリカに渡ったキリストの再臨を信奉するクエーカー教の一宗派で、祈りの際に激しく身体を揺さぶる仕草にその名が由来し、18世紀後半から19世紀にかけて活動の盛期を迎えた。独身主義、財産の共有、世俗からの分離などを柱とした彼らの信仰生活は「美と善の合一、美は有用性である」という教義と深く結びついたものであり、当然のことながらそのデザイン原理も簡素で実用性を重んじるものであった。造形上の特徴としては、直線に基づく構成、装飾の排除、実用性の重視などが挙げられるが、このデザイン原理に最も即した領域は家具であり、折り畳み式の椅子や机、机と戸棚が組み合わされた多目的家具など、簡素で機能的な家具が数多く制作された。このような独自なデザインが発達したのは、信仰に忠実であるために共同体の中で自給自足の生活を営んでいたシェーカー教徒の閉鎖性によるものだったが、資本主義の進展に伴う都市開発によって、19世紀以後はデザインの基盤であった共同体が解消されていく。しかし、シェーカー・デザインの機能主義的なデザイン原理は、その後のデザイン運動にも大きな影響を与えることになる。
(暮沢剛巳)
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