一般に「作品が何かの意味を指示する状態」を示す「意味作用」は、観者の側がそれを能動的に読み解いていく「解釈」と表裏一体の概念と考えられ、字義通りにとらえるなら、具体的に描かれているモデルが何であるのかを指摘することも、またその背後に潜む作者の理念や主義主張を抽出することも「意味作用」の一環をなすことに変わりはない。遠近法の確立や抽象絵画の出現などはもちろん、「意味作用」の可能性を拡大する契機であったわけだが、20世紀になると逆に、M・デュシャンを典型とする、作品に意味を付与することを拒絶する態度も現われるようになった。もちろん、いかなる「解釈」をもってしても作品の意味をすべて抽出することは不可能であり、すべての「意味作用」を読み解く作業は、作品の“不純物”を排除する形で成り立っていると言えよう。カッシーラーやパノフスキーの「象徴形式」なども、そうした排除の一形態と考えられる。
(暮沢剛巳)
関連URL
●M・デュシャン http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/m-duchamp.html
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