仏語で「絵画」を指す。この語がラテン語で「板」を意味する「タブラ(tabula)」に語源をもつことから、狭義では、「板絵」を意味する。しかし、支持体が建築物から自由であり持ち運びが可能であるという意味で、板絵が壁画との対概念であることから、広義では同様の存在形式をもつ「キャンヴァス画」についても指す。壁画と異なり空間における存在である以上、「タブロー」は画面を規定する境界をもたなければならない。このことから、「タブロー」は表現されたイメージと現実の空間との非連続性を生み出す機能をもつ額縁を有するのが本来のあり方である。だが、方法論に自省的となった近代の美術以降、額縁は塗られうる対象となり、または、額縁が外される、さらにはキャンヴァスが支持体の枠から外され壁に直接貼りつけられることもあった。そして現代、S・ポルケにあっては、キャンヴァスは透明となることで視覚的な「地」は壁となり、また額縁は支持体の木枠そのものとなってしまった。言い換えれば、近代以降の絵画における試み、特にフォーマリズムの理論においては、「タブロー」の意味を常に参照しつつもそこから逸脱し自由となることを目論むものであったが、今日ではそれが有している形式上の特性を「タブロー」そのものに引用するというパロディ的な状況も認められるまでになってしまった。
(保坂健二朗)
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