最新のテクノロジーと伝統的な東洋・日本趣味とが融合した折衷的な様式・雰囲気の総称。今やステレオタイプと化した観のある「テクノオリエンタリズム」だが、その先鞭をつけたのは、大阪の都市景観のうちに、旧来の日本的要素とテクノロジカルなイメージ(とりわけ、「強力わかもと」の電飾看板)とを重ね合わせた映画『ブレードランナー』であったとされる。だが、伝統的要素と最新のテクノロジーを折衷した様式はもちろんそれ以前にも見られたもので、例えば大正末期から昭和初期にかけて盛んに建築された、コンクリートの最新工法を駆使した建物に伝統的な屋根瓦を載せ、奇妙に折衷的な雰囲気を実現した「帝冠様式」もまた、ある意味では「テクノオリエンタリズム」の先駆と言える。いずれにせよ、きわめて非西洋的な伝統的な様式・美意識と、世界の最先端をいくテクノロジーという両極端な二つの属性は、ともに「日本」を語る上で必ず参照される文化的表象であり、その定式はルース・ベネディクトの『菊と刀』以来50年を経ても変わっていない。
(暮沢剛巳)
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