後期【ミニマリズム】を代表する作家R・モリスが提唱した概念で、ほぼ同じ時期に提唱されたD・ジャッドの「【スペシフィック・オブジェクト】」としばしば対比される。ジャッドの「スペシフィック・オブジェクト」が絵画でも彫刻でもない作品媒体の固有性を強調する立場であったのに対して、主論文「彫刻に関するノート」(1966)で「客体とは、より新しい美学における美学にすぎない(…中略…)人は様々な位置から、光や空間の配置関係が様々に変化する諸状況のもとで、自分が客体を関知するにつれて、自分自身が諸々の関係を確立していったことを認識するのである」と述べていたように、モリスの方は「客体」を空間の中で捉えることに主眼を置いていた。「ユニタリー・フォーム」とは、そうした空間認識の中で「客体」に与えられた名前だが、この「客体」はあらゆる表象への審級を拒み、あくまでも「客体」そのものとして存在し、その意味ではカント=【フォーマリズム】的な「【趣味】判断」をも受けつけない。ミニマリズムの到達点が、【モダニズム】の極北であったことを傍証している概念という意味では、やはり「スペシフィック・オブジェクト」と双璧をなしている。
(暮沢剛巳)
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