版画技法の一種。浮世絵版画に代表される板目木版に対し、木材を輪切りにしてその木口を版面として用いる。版式としては通常の木版と同じく凸版技法に分類される。18世紀末にイギリスのトーマス・ビューイック(1755−1828)が考案したとされる。版材には黄楊や椿など年輪の密度が高く硬い木質が使われ、これに銅版のエングレーヴィング技法と同じビュランで彫版する。木材の輪切りを用いる制約上、大きなサイズの版材は入手しにくいものの、銅版画に匹敵するほど細密な描写が可能なため、もともとは活字と組み合わせて、活版印刷の挿絵図版に利用された。今日、この技法で作品を制作する作家は数少ないが、日本の現代版画では、日和崎尊夫や柄澤斎などが代表的な木口木版作家である。
(木戸英行)
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