2019年09月15日号
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『時のかたち ものの歴史についての覚え書き』ジョージ・キューブラー

The Shape of Time: Remarks of the History of Things, George Kubler

美術作品だけではなく、人間によってつくられたあらゆるものを対象とし、事物に内在する時間性の分析から美術史や考古学の方法論の再構築を図った美術史家ジョージ・キューブラーの著作。刊行は1962年。キューブラーは、事物にはそれぞれ固有の時間の連鎖があると見なすことで、従来の等質的な歴史観によっては捉えがたい時間の複数性や非同期的性質に注目した。キューブラーによれば、異なる事物は異なる時間に属し、事物相互のつながりは「シークエンス」を形成し、それがそれ以上展開されえない状態になったとき、独立した「シリーズ」を形成する。このような立場から、従来の美術史(様式史)にはらまれていた単線的な展開――すなわち誕生、発展、衰退などの語彙によって語られる生物学的隠喩の予定調和が批判され、芸術作品とは、ある問題に対する「解」として現われるものであるとされる。また、一個の事物ですら、複数の異なる「系統年代(systematic age)」を備えた複合体であるとされ、キューブラーは事物の各構成要素の多種多様な成り立ち=「時のかたち」の発見こそが歴史家の責務であると説いた。このようなキューブラーの思考は、同時代のアメリカ美術にも波及した。たとえばR・スミッソンはキューブラーを援用し、フォーマリズム批評の限界について指摘している。

著者: 沢山遼

参考文献

  • The Shape of Time: Remarks of the History of Things, , George Kubler, Yale University Press, 1962

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