2019年08月01日号
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プルーラリズム

Pluralism

「多元主義」もしくは「複数主義」。ごく一般的に定義するならば、プルーラリズムとは複数の異なる価値観の共存をめざす立場を意味する。近現代美術の文脈でプルーラリズムという言葉が用いられる場合、その対象としてはまず「文化」と「様式」が考えられる。(1)前者の「文化」に関連づけられたプルーラリズムは、「多文化主義」もしくは「文化多元主義」(multiculturalism)とほぼ同じ立場として理解されることが多い。多文化主義については本辞典内の同名の項目で詳述したため、ここではより範囲を絞って後者のプルーラリズムについて解説する。(2)後者の「様式」におけるプルーラリズムは、1970年代頃から顕著に見られるようになった立場である。前衛や近代主義の失効が唱えられたこの時代、それまでの直線的な様式の交替としての美術史に対する異議申し立てが同時多発的に聞かれるようになった。すなわち、アルフレッド・バーJrが「キュビスムと抽象芸術」展(1936)におけるモダン・アートのチャートで提示したような特定の様式の交替ではなく、むしろ異なる複数の様式の併存が唱えられ始めたのである。このような主張が登場した時代背景としては、さまざまな方向に拡散する作品に対して単一の批評基準がもはや有効ではなくなったこと、従来の西洋中心主義的な「美術史」そのものが見直されはじめたことなどが挙げられる。こうしたプルーラリズムの立場は、従来の支配的な価値観に対する有効な批判となりうる一方、過度の相対主義へと至る場合には反対に批判性の欠如を示すことにもなるという点には留意する必要がある。

著者: 星野太

参考文献

  • 『現代美術のキーワード』, 「プルーラリズム」, ロバート・アトキンズ(杉山悦子、及部奈津、水谷みつる訳), 美術出版社, 1993
  • 『プルーラリズム』, ウィリアム・E・コノリー(杉田敦、鵜飼健史、乙部延剛、五野井郁夫訳), 岩波書店, 2008

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