建築を写した写真を通して、私たちが改めて気が付いたことは、あるひとつの建築が成立する上で地形的コンテクストが重要な要素になっているということです。そのことは実際に建物の立つ場所を訪ねることで理解されることから、あるいは、 建築そのものより周辺の風景にこそリアリティがある、と言うことができるかもしれません。その予感のようなものを抱きながら、私たちは、「建築のコンテクスト」を通して「建築」を見せることができるのではないか、と考え始めたのです。
当然ながら、建築には周辺の風景といった地形的コンテクストだけが存在するのではなく、経済的、政治的コンテクストも背後に存在しています。ローコストというクライアントの要望で住宅が建てられることがあれば、政治的決断により国家的建設プロジェクトが推進されることもあります。私たちは、そのような「建築のコンテクスト」に注目しながらプロジェクトを選んでいくことにしました。つまり、ここで重要なのは、この展覧会で私たちは「建築家」ではなく、「建築プロジェクト」をピックアップしていくことにしたということです。
ところで、経済的、政治的コンテクストを、雑誌に載せられた竣工後の写真から読み取ることはほとんど不可能です。なぜなら、それらはあくまでプロジェクトの「結果」を映しているのであり、経済的、政治的コンテクストは、プロジェクトの「プロセス」とより密接な関係を持っているからです。そこで、私たちは実際に建物を訪ねるだけでなく、建築プロジェクトのプロセスにも焦点を当てるため、プロジェクトの作者である建築家へのインタビューを始めました。
これから10月末までに、このブログに3本のインタビューを紹介する予定です。インタビューはそれぞれ10分程度に編集されていますが、ここでは最初の3分で区切った短縮版を紹介します。次回は早速その1本目を紹介し、その後数回に渡って「インタビュー」という手法や、もう一つのテーマである「建築展」についての私たちの考えを書いていきたいと思います。