インタビュー その2(建築メディアの被写界深度)

建築家にインタビューをすれば、プロジェクトのプロセスや思いがけない裏話などを聞くことができます。私たちは、インタビューからどのような情報を導き出すことができるか、そして、インタビューを視聴する側にとってどのような情報が必要とされ、有益であるかを議論しました。

そこで、前回述べたように、インタビューの大きな枠組みとして3つの質問を設けました。一つ目は、建築家の経歴についてです。この情報はインタビューされる対象についての基本情報であると同時に、私たち建築家(特に私たちの世代の建築に携わる者)にとって非常に興味のある情報です。二つ目は、プロジェクトについてです。建築家に直接語ってもらうことで、プロジェクトのプロセスを明らかにしたいと考えました。プロジェクトの過程で彼らが思考したことを語るとき、そこにはポルトガルの建築事情、あるいは社会状況があぶり出されてきます(また、その状況が強化されるようなプロジェクトを選んでいます)。最後に、ここで語られたプロジェクトやこれまでの建築家としての経験を元に、現代社会における「建築家の役割」について考えるところを語ってもらいます。それは、建築を学ぶ学生や若い世代の建築家にとって一つの指針となると同時に、建築家によって建築を取り巻く社会に対する考察がなされることを狙ったものです。

この3つの質問に対する回答以外に、実はもう一つ重要な情報が含まれるように映像を制作しています。それは、インタビューが「映像」でなければ伝えることが難しい情報です。私たちは、彼らがどこにアトリエを構え、どのように仕事をしているのか、その雰囲気を映像に収めようと考えました。私たちが建築写真の背後に見る「コンテクスト」と同種の情報に意識的にカメラを向け、映像に組み込むようにしたのです。建築家の活動の背景が見えてくることで、インタビューによりリアリティを与えることができ、その建築家の属する社会の一端を見せることができると考えました。

私たちの関心は、平べったい二次元情報となりがちの建築メディアのいわば被写界深度を高めていくことにあります。そしてその先にポルトガルという国が見えてこないか。そのような実験でもあるのです。

ブロガー:志岐豊
2010年9月20日 / 07:28

コメントはまだありません

コメントはまだありません。

現在、コメントフォームは閉鎖中です。