先週、「ルイス・ニシザワ・アーカイブ」プロジェクトのために、メキシコ国立自治大学(UNAM)の美学研究所附属図書館(Biblioteca de Investigación Estética)に行きました。
このプロジェクトでは作家のアトリエにある資料からアーカイブしていますが、たまたまアトリエにはない本を雑誌で見つけたためです。
ということで、アーカイブ・プロジェクトの説明をする前にメキシコシティの図書館事情について少し触れたいと思います。
メキシコ国立自治大学(UNAM)の美学研究所附属図書館の例
在墨の研究者の方々に聞いたところ、メキシコシティには日本で言う国立国会図書館のような、国内の書籍をほぼ網羅して所蔵している機関がなく、各分野ごとに専門機関が所蔵しているとのこと。これ、学問を横断的にリサーチしたいと思ったらかなり大変だと思います。
たとえば、メキシコ国立自治大学(UNAM)には各学部や研究所などが各々の図書館を備えています。UNAM図書館のウェブサイトを見ると、敷地内に100近い数の図書館があります。UNAMの敷地はものすごーーーく広いため、いくつかの図書館で資料をゲットするためにはスクールバスやタクシーを駆使して走り回らないといけません。
入館手続きは簡単で、美学研究所附属図書館の場合は写真付きの身分証明書を受付に預けるだけでした。一般利用者のスペースは高校の図書室くらいの大きさですが、ここには美術、音楽、パフォーミングアーツなど芸術関係の本を約48,000冊を蔵書しているとのこと。
開架に出ているのはごく一部なので、ほとんどは閉架書庫から出してもらわないといけませんが、混雑していなければすぐに出してもらえます。図書の貸出は教授、研究員、学科所属の学生のみなので、私は全ページをコピーしてもらいました。コピー代は安くて、モノクロ・A4サイズが1枚0.3ペソ(約1.5〜2円)。
☆コピー係が休憩に行ってる間はコピーできないので注意(14〜17時の間で2時間休憩)。
図書館のデジタルアーカイブ
メキシコの図書館でデジタルアーカイブはあまり見かけません(図書館によっては館内のパソコンでは見れるかもしれません)が、大学の研究論文のデジタルアーカイブはよく見かけます。UNAMは学費が無料ですが、その代わりというか、財産として論文を共有する仕組みが整備されているのはすばらしいなと思います。> UNAMの論文検索サイト
みんながよく利用している図書館、アーカイブ機関など
自分の参考のためにも、私のまわりのアーティストや研究者の方がよく利用している図書館、研究機関を聞いてリスト化しました。今回はアート関係の図書等を多くアーカイブしているものを挙げています。また、聞いたり調べたりした範囲でメモをつけました。
利用手続きについては、大学機関の図書館は身分証明書だけでOKのところが多いようですが、おそらく専門機関になるほど利用手続きが多くなると思われます。
以前、ロシアの国公立図書館や資料機関でも入館手続きで名前や所属機関などかなりの項目を書いたり、推薦状が必要だったりしたので、その土地の言語がわからないとなかなか手間がかかります。
またメキシコでは本屋は少なく、本は高価なので、ソカロや大学で行われるブックフェアーや、大学通りの道ばたで売っている古本を買ったりします。さらに、図書館は複数館に分散しているし、図書はほぼ閉架書庫にあるし、ブック・サーフィンはしづらい状況です。
そのためかメキシコ人はほとんど本を読まない、と言われているけれど、私の友人たちは頻繁に最近読んだ本の情報を交換して、貸借しています。それはそれでおもしろい情報の仕組みだと思っているけど、個人的には、たまにはいろんな本を片っ端から斜め読みしたい気分になります。
[全般]
■Biblioteca Central(メキシコシティ)
フアン・オゴルマンの壁画で有名なUNAMの中央図書館
■Biblioteca Erik Larsen(メキシコシティ)
サン・カルロス美術館附属の図書館
■Hemeroteca Nacional de México(メキシコシティ)
古い新聞や雑誌も見ることができる
■Biblioteca de México José Vasconcelos (メキシコシティ)
UNAMのアーカイブ機関
■El Colegio de Mexico(メキシコシティ)
日本文化研究部門もあるので、メキシコでは比較的多く日本語の書籍を所蔵している(ただし古いものが多い)
■Archivo General de la Nación(メキシコシティ)
図書やその他出版物など、各専門性の高いアーカイブを所蔵
[美術/Artes]
■Biblioteca Justino Fernández(メキシコシティ)
UNAMの美学研究所(Investigación Estética)附属の図書館
■Biblioteca Colección JUMEX(メキシコシティ)
芸術助成もやっているメキシコの飲料メーカー・フメックス財団の私設図書館。メキシコシティからやや遠いが、国内外の最新の現代美術カタログ等を見ることができ、現代美術に関する蔵書が最も多いと言われている
■Instituto de Artes Gráficas de Oaxaca(オアハカ)
メキシコを代表する画家の一人、フランシスコ・トレドが設立したオアハカ・グラフィックアート研究所附属の図書館/博物館。メキシコでは珍しく、豊富な美術書が開架に解放されている
■MUAC(メキシコシティ)
UNAM内にある現代美術館で、近年メキシコの現代美術作品を中心にしたアーカイブを始めている。今後は写真や映像作品、関連する書籍も多く含まれてくると思われる
■Biblioteca Nacional de Antropología e Historia(メキシコシティ)
国立人類学博物館附属の図書館。スペイン先史時代の写真、映像、図書、新聞など
[写真、映画/Foto, Cine]
■Colección Fotográfica de Fundación Televisa(メキシコシティ)
大手テレビ局・テレビサのアーカイブ。メキシコの写真家マヌエル・アルバレス・ブラヴォーを始め、ポール・ストランド他、国内外の重要な作家の写真コレクションを持つ。一般公開はされておらず、年に1〜数回行われる展覧会や出版物によって見ることができる
■Filmoteca(メキシコシティ)
セントロ付近とキャンパス内の2つあるUNAMのアーカイブ機関。古い映画の修復・保存機関のため、映画の種類は限られている。図書の数は少ない。セントロの方では、以前は利用の際にUNAMの指導教官の署名が入ったレターの事前提出が必要だった。その上で、場合によっては上映ホールのあいている時間帯に上映してもらうこともできた。UNAMのCUキャンパス内にあるvideo clubの会員になればDVDを借りることができる
■CINETECA Nacional de México(メキシコシティ)
一般公開している資料室のモニターでフィルムを見ることができるが、事前にメールで所属機関名、理由などを明記したものを送り、許可が必要
■Biblioteca Centro de la Imagen(メキシコシティ)
写真を多く所蔵している
■Centro Nacional de Investigación, Documentación e Información de Artes Plásticas (Cenidiap)(メキシコシティ)
国立の芸術アーカイブ機関。写真フィルムも多くコレクションしている。デジタルアーカイブのページあり
■Biblioteca de Facultad de Ciencias Políticas y Sociales(メキシコシティ)
UNAMの政治科学部と社会学部の附属図書館。映画関係の本も結構あるが、新しいものは少ない
[建築/Arquitectura]
■Biblioteca Ibero Americana(メキシコシティ)
イベロ・アメリカ大学附属図書館
■Biblioteca Lino Picaseño(メキシコシティ)
UNAMの建築学部(Facultades Arquitectura)附属の図書館
[パフォーミングアーツ/Performance]
■ex-teresa arte actual(メキシコシティ)
国立ベジャスアルテス研究所の機関で、パフォーミングアーツフェスティバルやアーカイブを行っている
[本屋/Librería]