アートフラッシュニュース
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脱臼
最終更新日:2010年10月07日
今回参加している作家たちにとって眼前に広がる日常は、それ自体が疑うべき対象としてそれぞれの眼に映し出されているように思われます。
だからこそ制作とは、既成の概念によって硬直化した世界を対象とせず、混沌に満ちた不定形な世界にその身を投じる行為として何よりも意味をもちえています。制作における身体的行為の媒介を通じて、答えでもなくまた問いでもなく、疑いをこそより純粋化して抽出すること。もしくはときに作家の意図に反しながらも、不可避的に抽出されたものが作家、鑑賞者の双方にとって命名することが不可能な「何か」でしかありえないこと。
それはまるで、一方向に伸びようとしていたしなやかな腕が関節という幹から外れてしまうように、鑑賞者が作品に対して固有の意味を想起させることを圧倒的に「脱臼」させる作品といえます。何ものにも還元されえず、かつ言及不可能な作品の曖昧さや不確かさは、しかしながらそれらが固有なものではないまま保持されることによって、矛盾のない透明な世界を夢想する私たちの矛盾をかえって鮮明に暴きだそうとします。
世界の豊穣な矛盾に気づくことが、現代の閉塞した世界を生き抜くためのひとつの手段であるとしたら、islandでの本展示における「何か」と対峙する経験とは、まさしく「脱臼」の経験としてその可能性が問われるべきではないでしょうか。
[作家]
天野亨彦、磯邉一郎、今村哲、利部志穂、小林耕平、斉と公平太、野口行範、星野武彦、森田浩彰
[批評]
森啓輔
- 会場
- island / アイランド
千葉県柏市若葉町3-3 - 会期
- 2010年10月2日(土)〜29日(金)
- 休館日
- 火曜日、水曜日
- 問い合わせ先
- TEL & FAX 047-170-2404