アートフラッシュニュース

現代デザインの指標的存在である杉浦康平氏が、とりわけ心血を注いで作りつづけたブックデザイン。
西欧のモダニズムと、東洋の美意識とを高次に昇華することで、生動し、呼吸してやまない、独自の多次元的手法を切り開いてきました。
杉浦氏の膨大な作品群の中でも、格別の光彩を放つのが、豪華限定本です。
1970年代後半に本格化する、「マンダラ」を軸とするアジアの宇宙観探究とともに、氏が企画・構成したいくつかのアジア精神世界の図像展と深く連動しあうデザインへと結実しています。
今回はその頂点に位置する、マンダラを主題にした『伝真言院両界曼荼羅』の巨冊を展覧。
杉浦氏独自の眼差しのもと、《日本密教（中国思想を反映した）》のマンダラのかつてない壮麗な造本宇宙の魅力を、パネル展示と、杉浦氏による映像作品を加えて紹介します。

教王護国寺蔵『伝真言院両界曼荼羅』

石元泰博=企画・撮影、杉浦康平=構成、平凡社、二帙各560×374mm、写真集・解説本・経本・掛軸などから構成、協力=谷村彰彦＋甲田勝彦＋郡幸男
胎蔵界の帙からは一対の「掛軸」と、一対の「経本」が、金剛界の帙からは金と銀を基調とする一対の「洋本」が現れる。「東洋式造本」と「西洋式造本」を対置させた、全六冊からなる重層世界。
「一即二」、「二即一」、「多即一」を実現して両界曼荼羅の本質を開示する、ブックデザインの金字塔。

■記念レクチャー／レセプション
開催日：2015年6月4日(木)
　　　　記念レクチャー　18:30～19:30
　　　　レセプション　19:30～20:30
出演：杉浦康平(グラフィックデザイナー)
定員：100名(参加無料・要予約・先着順締切)
会場：グランビスタギャラリー サッポロ
参加申し込み：お電話 、メールフォームにてお申し込みください。
Tel. 011-261-3311(代表)
受付時間：平日11:00～18:00

□杉浦康平
1932年東京生まれ。グラフィックデザイナー。
神戸芸術工科大学名誉教授および同大アジアンデザイン研究所所長。
1950年代後半からポスター、雑誌、レコードジャケット、展覧会カタログなど文化的活動を主題にしたデザインを手がけ、70年頃よりブックデザインに力を注ぐ。
アジアの図像研究の第一人者としても知られ、アジア文化を紹介する展覧会の企画・構成や造本を数多く手がけ、国内外での講演を通して、アジア各国のデザイナーとも密接に交流する。
日宣美賞、芸術選奨新人賞、毎日芸術賞などを受賞。1997年、紫綬褒章受章。
主な著書に、『かたち誕生』、『宇宙を呑む』、『宇宙を叩く』、『多主語的なアジア』、『文字の美・文字の力』、『文字の靈力』、『時間のヒダ、空間のシワ…［時間地図］の試み』など。