2020年11月15日号
次回12月1日更新予定

アートフラッシュニュース

Pharmakon Chain Reaction(ファルマコン––連鎖/反応)

最終更新日:2020年11月19日

世界は新型コロナウイルス感染による未曾有の状況が続いている。社会に蔓延する感染の不安や恐怖を煽る言説により、ウイルスの存在はあたかも人類にとっての「敵」/「侵入者」/「テロリスト」として認識されている。私たちは、自己防衛のためウイルスを絶対的に遮断しようと他者との接触を徹底的に避け、生活を犠牲にし、日常はすっかり変容した。ソーシャル・ディスタンス、新たな枠組み。煽動された恐怖は連鎖反応を起こし、さらなる恐怖を生む。私たちは見えない敵を前に文字通り震撼し、途方に暮れる。

だが、生命の注目すべき挙動の一つに、細胞の自死として知られるアポトーシスや一部の免疫反応など、それが一見正反対に見える活動を同時に行って平衡を保つという営みがある。そもそも生命体は膜によって自己と外界を区別すると同時に、膜に空いた多数の孔を通じて外界との物質や情報のやり取りするおかげで生存している。ある個体とは、他の生命体と複雑な関係性(あるいは連鎖)の中に存在するのであり、そのことは生存時も死後も変わらない。このような生命の本質を無視し、ウイルスを撲滅すべき敵として完全な衛生を目指す思考は不可能であるばかりか危険ではないだろうか。

本展覧会「ファルマコン:連鎖/反応」では、今日の私たちの身体が置かれた状況―「毒を一方的に排除する志向」―を問題視する。薬と毒という両義的意味を持つ「ファルマコン」の概念は、物事がしばしば持っている両面性(陰と陽、毒と薬、メリットとデメリット、効用と副作用、さまざまな言葉で言い表される「ある側面」と「それと補完的である側面」に着目する。私たちが「毒」とみなす存在を根本的に排除しようとするとき、私たちは世界が相反するものの均衡で成り立ち、それらが単に調和するだけでなく時には複雑に絡み合って全体を形作っているという事実を忘れ、そのことにより自らを生きにくくしている。

ファルマコンの概念に基づく芸術的アプローチを通じて世界を再考することによって、生命をより直感的に捉え直すことができるだろうか。

大久保美紀(キュレータ)

ウェブサイトより)

参加作家

エルイーズ・イルベール、入江早耶、大久保美紀、加藤有希子×児玉幸子、フロリアン・ガデン、ジェレミー・セガール、谷原菜摘子、堀園実、福島陽子、古市牧子

関連イヴェント

シンポジウム「ファルマコン連鎖/反応をめぐって」(仮題)

日時:2020年12月19日(土)14:00-18:00
登壇者:吉岡洋、大久保美紀、加藤有希子、小澤京子、フロリアン・ガデン

展覧会概要

会場
アトリエみつしま
(京都市北区紫野下門前町44)
会期
2020年12月8日(火)~12月25日(金)
休館日
月曜日
開館時間
火水木日12:00-19:00、金土12:00-20:00
主催
吉岡洋・大久保美紀
共催
アトリエみつしま
ウェブサイト
http://mrexhibition.net/pharmakon/?fbclid=IwAR1Q1NWH7S0A31_YJj-r3A9dPD5l68K9U307lg7C9W6X4K0jMYz2gkQn6OM


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