アートフラッシュニュース

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村田真 オープンスタジオ

最終更新日:2021年10月13日

artscapeレビューにも執筆いただいている村田真氏のオープンスタジオが、10月23日(土)、24日(日)、30日(土)、31日(日)の4日間、横浜のMAオフィスにて開催されます。



2020年10月から突然「手」を描き始めました。きっかけは、新型コロナウイルス禍でわが暮らし楽にならざり、じっと手を見る……なんてシャレたもんじゃありません。たまたま本屋で、拳を突き上げるイラストが描かれた画集の表紙に目が止まり、「あ、使えそう」と思ったのがきっかけでした。絵を描くきっかけなんてそんなもんです。ちなみにその画集は『抗議するアートグラフィックス』(グラフィック社)。

なぜ拳のイラストに反応したのかといえば、当時ぼく自身なんとなく拳を突き上げたい気分だったからでしょう。振り返ってみると、その少し前に、小役人風情の菅総理が誕生、直後に日本学術会議の任命拒否問題が発覚し、いやな気分になりました。海外では、香港やミャンマーの民主化闘争が次々に潰されていたのもこの時期です。そんな鬱屈していたところに拳の絵が目に入って、手だけでなにか表現できないかとひらめいたのです。たぶん。

画集の表紙は拳を突き上げるだけですが、中指を立てたらもっと挑発的になるんじゃないか。そういえば、マウリツィオ・カテランは中指を立てた彫刻をつくっているし、アイ・ウェイウェイは天安門広場やホワイトハウスに向けて中指を突き立てた写真を撮っているけど、絵に描いた人はあまり知りません。どうせなら、中指を立てた絵と、親指を下に向けた絵をセットで見せよう。さらに、人差し指と中指のあいだから親指を出したり、人差し指、中指、薬指を立てた絵も描いてみようと。

いろいろな手のポーズを試しているうちに、名画に現れる手のしぐさを自分の手で再現して描くことを始めました。レオナルドの《ヨハネ》の右手、エッシャーの手を描く手、仏像の手、ニジンスキーの手、ベン・シャーンのペンを持つ手、デューラーの祈る手、雪舟の《慧可断臂図》、グリューネヴァルトの磔刑図、鶴岡政男の《重い手》、ケーテ・コルヴィッツの顔を覆う手、ヴィト・アコンチの《センターズ》など。名画と重ねて自分の手を描く、さらにその手を描く手を描く……。描いているうちに内容も描き方もどんどん変化していきました。

こうして1年足らずのあいだに40点ほど描いたら、不思議なことに、急に興味が失せてしまいました。描き始めるのも突然なら、終わるのも唐突です。描き尽くしたという達成感があるわけではないし、かといって描き尽くせないというもどかしさもなく、ただ終わりが来たという感じ……。ご笑覧いただければ幸いです。

2021年10月 村田真

展覧会概要

会場
MAオフィス 長者町アートプラネット(CHAP)1階
(神奈川県横浜市中区長者町9-159)
会期
2021年10月23日(土)、24日(日)、30日(土)、31日(日)
開館時間
14:00〜18:00
ウェブサイト
http://artplanet159.web.fc2.com/about.html