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アニッシュ・カプーア_ 奪われた自由への眼差し_監視社会の未来

最終更新日:2023年12月05日

サーベイランスシステムがいつの間にか網の目のように街中に張り巡らされている。 目に見えない「監獄の誕生」が現前化し、現代社会において私達が統制され監視されていることに気づかされる。 目に見えない監視体制で、 監視される側が 芸術表現をどのように捉えていくのかということが、 今回のテーマである。 功利主義をとなえ「最大多数の最大幸福」をめざして刑務所を設計した イギリスの哲学者ジェレミー・ベンサムは、パノプティコン(一望監視)を構想した。 そして、ミシェル・フーコーは、 一望監視が滲透し「監視社会」によって まさに現代の「監獄の誕生」を予見したのである。 このような視点に基づいて「奪われた自由への眼差し」展を構想することとなった。

アニッシュ・カプーアの作品は人間存在そのものに潜んでいる情動を表象している。 監視の下で統制されている人々が自らに内在しているカオティックな情動に気づかされていないが、 作品を見ることで自らのカオス(不条理)と対峙せざるを得なくなり、 その存在に気づかされるという展覧会構造になっている。 現代社会では、 目に見えないゲージの中に知らず知らずのうちに我々が投入され、 日常的な監視を受けることで、 統制された社会に適応する標準的な人間が生みだされていく。 IT(情報技術)の展開で、 ソーシャルメディアでの送受信や購入履歴など 日々生まれるデータは監視にも使われている。 「ビッグ・ブラザー」が支配する世界と違って国や企業だけではなく、 見られる側も進んで参加しているのである。

人間存在そのものを映し出すカプーアの芸術作品(鏡)が、 現代社会における監視メカニズムを浮かび上がらせる契機となり、 そしてその作家が、 奪われた自由への眼差しを 我々に向かって投げかけているということを示唆する試みとなる。 さらに、我々にとっての真の自由とは何なのかということを問いかけていきたい。 アニッシュ・カプーアは、 ニューヨーカーのインタビューで「アーティスト達は、 様々な形で資本主義によって絶えず剽窃されているのです。 私たちはあらゆる場面で反撃しなければなりません」と語っている。

飯田高誉|Takayo Iida本展キュレーター スクールデレック芸術社会学研究所所長

ウェブサイトより)

アニッシュ・カプーア

1954年インド・ムンバイ生まれ。1970年代に渡英し美術を学び、現在では英国を代表する彫刻家として国際的に高い評価を得ている。1990年のヴェニス・ビエンナーレ英国館での個展、同年のターナー賞受賞、1992年ドクメンタ出展などをはじめ、その後主要な国際点への参加や欧米の美術館での個展を開催してきた。欧米的な価値観の域を超えた、東洋的な思想に基づくカプーアの作品の独自性は、強く人々の心を捉えると同時に、鑑賞する誰もが作品に入り込める、視覚的な喜びや作品体験を純粋に楽しめる親しみやすさも持っている。

展覧会概要

会場
GYRE GALLERY
(東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F)
会期
2023年11月23日(木)〜2024年1月28日(日)
休館日
12/31〜 1/1
開館時間
11:00〜20:00(2024年1月2日のみ、13:00〜20:00)
問い合わせ先
TEL:0570-05-6990 ナビダイヤル (11:00〜18:00)
主催
GYRE/スクールデレック芸術社会学研究所
企画
飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)
会場設計
梅澤竜也(ALA INC.)
デザイン
乗田菜々美(graphic potato)
ウェブサイト
https://gyre-omotesando.com/artandgallery/anish-kapoor