疑問符をつけたくなる作品ばかり。たとえば「タイム・マシン」は、オブジェ、映像の投影、特殊撮影と盛りだくさんなしかけがかえって空しく感じられる。「花火」も、20世紀フォックスのロゴが花火に変わる必然性は結局どこにもないのではないか? 今世紀の映像文化をまるごと嘲笑するつもりでやっているつもりならともかく、会場に用意された解説ではどうも大マジなようだから、理解に苦しむ。
これまで断片的な写真とその見せ方に、たんに散漫な写真という印象しか持たなかったのだが、こうして私室のような小ぶりなギャラリーで見てみると、その構図や色調の繊細さに気づく。被写体に対するティルマンスの愛情が、ほかの多くの写真家の作品のように嫌味にならないのはこの繊細さのおかげだろう。安っぽいインク・ジェット・プリンターによるプリント・アウトや印刷されたポストカードが、オリジナル・プリントのなかにすっかり馴染んでいるのもおもしろい。
スクリーンの役割を果たすオブジェ+ヴィデオ映像のプロジェクションという、このごろ流行のインスタレーション。すりガラスで作った角柱に、倒立させた滝の水流(つまり水は下から上へ流れる)を投影するのだが、映像が中途半端に不鮮明でその投影の効果が十分に発揮されない。それが最初から狙いだといわれればそれまでだけれど。