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Art Scape
1999年8月 ヨーロッパ篇---熊倉敬聡
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8月26日 ウッジ
ポーランド最大のユダヤ人ゲットー

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収容所跡
収容所跡

ユダヤ人ゲットー跡
ユダヤ人ゲットー跡

 奇妙な巡り合わせというべきか、リベスキンドの故郷、ポーランドのウッジにいる。
 ウッジは(人口から言うと)ポーランド第二の都市である。その割に(クラコフやグダンスクなどに比べ)国際的知名度が低い(ワイダやポランスキーを輩出した国立映画学校の存在は有名かもしれないが)。
 ウッジは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、主に繊維産業により急速に工業化を遂げた都市である。その主な担い手は勿論、ユダヤ資本であった。ここには、ポーランド最大のユダヤ人ゲットーがあった(界隈はそのまま残っている。勿論住んでいるのはもはやユダヤ人ではないが)。
 そして、ゲットーは当然のごとく、第二次大戦中にナチスにより一掃される。ゲットーの多くの人々は強制収容所で命を落とした。このユダヤ(資本)の一掃により、都市もまた急速に活力を失う。
 現地の人によると、現在、実質失業率は40%。あちこちにアルコール中毒の人々が昼間から漫ろ歩く。
 監獄として建てられ、ナチスによりユダヤ人の収容所として使用された施設跡を訪れる。第二次大戦終戦の前日に証拠隠滅のため、ナチスにより(収容者ごと)燃やされた建物の一部が今もそのまま残っていて、ミュージアムとなっている。
 人間の極限的残酷を提示する数々のドキュメント。ここで生きながら燃やされた人々の写真、拷問台、人間の皮革細工など。

 人類の歴史の深み。その残虐、崇高、あるいは日常の堆積。その圧倒的な厚みに対し、「現代芸術」は今、そしてこれから、どれほどの意味を持ちうるのだろうか。あるいは持たぬのだろうか。改めて、その存在理由を根底から考えさせられる今回の旅であった。

 

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9月の予定 ニューヨーク

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"Klee Cities"
 メトロポリタン美術館
 6/22〜9/5

"Shari Rothfarb: Water Rites"
 ユダヤ美術館
 6/20〜10/17

"Sophie Calle: The Eruv of Jerusalem"
 ユダヤ美術館
 6/20〜10/10

"Jeanne Silverthorne: The Studio Stripped Bare, Again"
 ホイットニー美術館(フィリップ・モリス棟)
 7/30〜10/15

"The Un-Private House"
 ニューヨーク近代美術館
 7/1〜10/5

"Downtown Arts Festival"
 10/8〜10/30

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