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今年(2001年)7月にスペインのバルセロナで開催されたイコムの大会に出席した。イコム(ICOM)は、ご存じの方も多いかと思うが、世界の博物館で組織される非政府団体である。本部はパリにあり、各国に国内委員会を置く。[途上国の中には国内委員会を組織できない国もあるようだ。この問題への対応策の一つとして、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの地域組織(regional organization)がある]国別の組織の他に国際委員会と関連団体がある。
イコム大会は毎回テーマが設定されるが、今回は「諸変化を統御する:経済的・社会的問題に直面する博物館」がテーマであった。筆者は国際委員会のひとつであるCECA(教育と文化活動の国際委員会)のメンバーとして参加したので同国際委員会の様子を報告する。
大会は7月1日(日)から6日(金)まで開催されたが、他の国際委員会同様、CECAのプログラムは2日から4日までの3日間であった。そのスケジュールは以下の通りである。
7月1日
9時30分 委員長の開会の辞
10時 研究発表
2時〜4時 昼食(これがスペイン式である)
4時 マーケット・オブ・アイディアズと呼ばれる短い発表、6時終了
7月2日
9時 基調講演、次いで研究発表
2時〜4時 昼休み
4時 マーケット・オブ・アイディアズ、6時終了
7月3日
9時 2つ目の基調講演、9時30分からはマーケット・オブ・アイディアズ
12時30分 クロージングスピーチ
2時〜4時 昼食
4時 ビジネスミーティング、いわゆる総会である
すべての発表を聞いたわけではないが、プログラムによると全体の半分近くが何らかの形で来館者調査や評価を扱ったものであった。2つの基調講演の内の一つでも「経済的・社会的問題に直面する博物館」は、来館者の研究を行うべきと述べられている。これが博物館教育における最近の動向ということであろうか。しかし、データや表ばかり見せられると、聞くほうとしては正直なところ今ひとつおもしろくない。その中で今回筆者の耳に入った新しい言葉があった。constructivismである。この用語はもともと教育理論としてかなり昔からあったもののようだが、近年教育者の間で注目されているという。この理論を博物館教育に持ち込んだのが以前CECAの委員長を務めたこともあるアメリカのレスリー大学教授G・ハインである。この理論をハインは10年前イスラエルで開催されたCECAの会議で発表している(Constructivist Learning Theory, Jerusalem Israel, 15-22 October 1991)。また、英国の博物館教育雑誌GEMにも1995年に書いている。今回のBaker-CohenとBaileyのEvaluating Constructive Exhibitsは、ハインの教え子たちによる発表であった。
水曜日のクロージングスピーチはJerome BrunerのCulture, Museum and Educationと題されたもので、自分自身の経験に基づいたわかりやすい例で博物館における教育の問題を論じたものであった。そしてこの中でもやはりconstructivismという言葉が聞かれた。この理論は博物館教育の世界でも注目を浴びつつあるのかもしれない。次回の筆者の報告はこのconstructivismをとりあげる予定である。(河野哲郎) |
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