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ゾーイトロープ |
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ジョルジュ・シュウィッツゲベルは油彩画風の画面を動かしていくアニメーターで、彼が1985年に製作した短編アニメーション『78回転』では、レコード、コーヒーカップ、らせん階段などの円環状のモチーフが、それぞれの回転運動によって切れ目なくリレーされていく。そのリレーのなかにちらりと登場するのがゾーイトロープである。『フランケンシュタインの恍惚』(82)で映画に対し、『絵画の主題』(89)で絵画に対してオマージュを捧げたシュウィッツゲベルは、ここでは運動を再現しようとした先人たちの試みにオマージュを捧げているわけだ。映画が(そしてイラストレーションを用いたアニメーションの場合は絵画も)アニメーションと縁の深いものであるのはもちろんだから、映画や絵画と並んでゾーイトロープがオマージュの対象とされたのは不思議なことではない。しかし、カメラ・オブスキュラのような光学装置と並んで映画の祖先とされるゾーイトロープではあるけれど、実写映画の誕生のためにはもうひとつ写真装置の発明が必要だったのだから、側面に絵の描かれた円盤を鑑賞者が回転させることにより、残像現象を利用して(パラパラマンガと同じ原理で)運動のイリュージョンを作り出す装置である、肉体的遊戯性を持ったゾーイトロープの血は、実写映画よりもアニメーションのほうにいっそう濃くひかれていると言えるだろう。アニメーションは実写映画よりもはるかに「由緒正しい」メディアなのだ。