ハム・キュン「チェーシング・イエロー」
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彼女は韓国の作家で、これは、街で出会った黄色い服を着た人をヴィデオ・カメラを持って追い掛けていくという作品です。彼女はヴィデオ作家ではなくて素人芸ですが、画面をふらふらさせながらずっと追い掛けて記録するのを延々と何日間も続けます。黄色に特定の意味を負わせているわけではなく、黄色い衣装という一つの文化的な記号に目をつけて追跡して、その後本人に延々とインタビューするという一種のソーシャル・リサーチであって、ある社会生活をしている人間がそこに浮かび上がるわけです。生徒全員に黄色い制服を着せているソウルのリラ小学校を校舎の上から撮った映像を見ると、校庭に黄色い子供達がプチプチ並んでいたり、体操の時間に集合してきたり、あるいは誰もいなくなったり、そういうことが繰り返されています。ある双児の兄弟が家に帰るところを追い掛けていって、最後はその家の中まで上がり込んで洋服ダンスを開けさせ、黄色い服が揃っているところを撮影したりもする。日本に来た時のエピソードもクレージーです。夜中の2時か3時に黄色いフェラーリが青山にとまっているのを見つけてカメラを向けて車の窓を叩いたら、相手が赤信号なのに逃げて行ったり、浅草の木馬館で旅の一座の黄色い衣装を着た人を楽屋から舞台から撮りまくったところ、夜興行主に呼び出されて「お前ら何考えているんだ」と凄く怒られて平謝りに謝ったりしました。そのチェーシングをフォローするだけでこちらは3人掛かりです。これはまだヴィデオ映像としては完成していませんが、僕としては非常に楽しみにしています。[建畠晢]
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