マヤ・バイセヴィッチ「Women at Work」

これはボスニアのサラエヴォ出身の作家の作品です。建物を修復する時にはく落防止のためにネットを張りますが、昼間の男性の仕事が終わった後、女性たちがやってきてそのネットの上に刺繍をしているという作品です。フェミニズム的な文脈で企画された彼女のプロジェクトのドキュメントですが、大切なのは、小さなハンカチに刺繍をするような仕事でも、それを公の場所でプレゼンテーションする機会を得ることでそれが別のアピアランス（あらわれ方）をもつということです。それが面白いし、興味深い。アクティブにものを破壊したり構築したりする男性の仕事と、そのかげで行なわれる細々とした仕事や小さなこと、日常の中で見落とされているそうしたものを形象化していく、対比のコンビネーションが効果的だと思います。そういう意味で新しいフェミニズム的な表現でありながら、確固たる美的をもった作品ではないかと思います。［長谷川祐子］