リクリット・ティラヴァニャ
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リクリット・ティラヴァニャはタイの出身ですが、ブエノスアイレスで生まれて世界中を転々として、今はニューヨークとベルリンに拠点があります。最初に画廊でタイ・カレーをつくってそれを画廊に来た人皆にふるまって、その後、それをインスタレーションとして展示したことでほとんど神話的な作家になっています。彼の場合は、移動し続けること、搾取しないこと、与え続けることがコンセプトの中心です。移動していく乗り物がメタファーとして展示されています。展覧会にその車で移動してきて、そのままギャラリーの展示室までやって来て、その移動のプロセスで出会ったものを記録したり、途中で出会った人たちのインタビューを撮ったヴィデオを見せたり、実際に展示期間中に作家がこの中で過ごしたりして時間を共有していく、というものです。作家自身の時間は失われていきますが、いかに与え続けるかがテーマであり、ライフスタイルを提案した作品になっています。与え続けること、時間を共に過ごすことをテーマにするリクリットは、欧米では新しいものとして熱狂的に受け入れられましたが、よく考えてみると、何かを与えていくこと、シュアしていくことはアジア的な考え方であり、私たちにとってはナチュラルだと思います。それをスタイルとして確立して現代美術の言語としてもたらした作家です。[長谷川祐子]
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