曽根裕「ホンコン・アイランド/チャイニーズ」
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「香港島」の作品は、いわゆる建築模型を型どった香港島の夜景です。彼はヘリコプターでロケハンをして、2階の見えている部分だけを撮っていますが、それを大理石という確固たるクラシックな素材で造るという大きなアンビバランスによって、かえってこれが夜景であることを信じさせてしまう不思議な力があります。そうした不可能性のストーリーが曽根裕の面白さになっていると思います。
曽根裕さんの「19番目の彼女の足」は、モノサイクルを19個つなげたものです。これを19人の言語の違う人たちに真剣に漕いでもらって前に進むというプロジェクトです。2つか3つのサイクルをつなげた場合は想像がつくと思いますが、これはいかにもできそうでできないプロジェクトです。どんなに練習しても3mか4m進むのがやっとですが、あらかじめ不可能と分かっているにもかかわらず可能性を託してしまう。そこには、ディスコミュニーケーションを内包するコミュニーケーションの真の姿があります。そういう一種の矛盾を抱えた機械、それは逆に豊かなイマジネーションをかき立てる装置でもあります。こういう不可能性の物語が、逆に人々に大きな可能性やポジティヴなエネルギーを与える、そういう装置としての神話をこの作品に見ることができます。[長谷川祐子]
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