アーティスト:三岸節子 会場:尾西市三岸節子記念美術館 会期:1998年11月4日(水)〜12月20日(日)
尾西市に生まれた三岸節子の作品を公開する記念美術館が、11月に愛知県尾西市にオープンした。この展覧会は、その開館記念展。まず戦前の画壇デビュー作「自画像」、さわやかな色彩が印象的な静物画など、初期の作品が並ぶ。続いて、60年代神奈川の大磯にアトリエを営む頃から描かれるようになった、湘南の輝く太陽や海岸を思わせる「太陽賛歌」シリーズ、ヴェネツィア、アンダルシア、ブルゴーニュ、パリを描いた風景画が展示される。現在、90歳を越えてもなお創作を続ける彼女の意欲は、どこからくるのか、70点の作品を前に考えないわけにはいかなかった。美術館は、彼女の生地跡に建設されており、かつてこの敷地にあった紡績工場を思わせる鋸型の屋根、現存する土蔵を活かした展示室、ヴェネツィアをイメージした水路など、彼女の人生と深く関わった特色のある施設になっている。 三岸節子記念美術館 土蔵展示室 (パンフレットより)
会場:国際デザインセンター4階・デザインギャラリー 会期:1999年1月8日(金)〜17日(土) 入場料:無料
国際デザインセンター・デザインミュージアムのアメリカン・アール・デコ・コレクションをシリーズで紹介する展覧会の第4弾。未来を夢見、宇宙を想像した1930年代の雑誌「ポピュラーサイエンス」にスポットを当てる。この科学雑誌の表紙には毎号、新しい技術を応用した実験的なプランが紹介されていた。それらは実現不可能な夢物語のようだが、自由奔放な想像力は独創的だった。その背景には、電化製品の普及や新しい交通機関の登場など、当時の最新技術の躍進がある。 グラフィックデザインの視点から見てもユニークな「ポピュラーサイエンス」誌約60冊を、同時期の人気テレビ番組から流行した光線銃のおもちゃや流線型の自転車など、当時の宇宙志向、未来志向を示すグッズとあわせて展示する。
アーティスト:遠藤利克 会場:KENJI TAKI GALLERY 会期:1998年12月12日(土)〜1999年1月23日(土)
テーマは「日本近代」。ギャラリーのスペースを最大限に利用した展覧会だ。1階には巨大な檻のような作品が置かれる。床の部分には鉄を敷き、その上に土と水を張っている。檻の格子にあたる部分は、燃やした後、タールで処理した木だ。2階には箱形の作品を展示。木枠の中に、やはり鉄と木と土、さらに畳が入り、水が循環している。遠藤によれば畳は日本の近代の象徴的な素材だという。そして、その作品のまわりに「Trieb――捏造(第7サティアン)」と題されたドローイングが数点並ぶ。実際に上九一色のオウムのサティアンで撮った写真を生ゴムなどで覆った作品だ。遠藤は今回の個展でも根元的な素材のみを使い、そこに強烈なエネルギーをみなぎらせている。日本近代の規範の無さと矛盾が作り出した澱のような存在がオウム事件だったのではないか、展示作品を見ながらそんなことを考えた。
アーティスト:高山良策、岡本太郎、寺山修司 他 会場:愛知県芸術文化センター 会期:1999年1月21日(木)〜1月24日(日)
古くは古代ギリシア神話の怪物や東洋の麒麟など。昭和の日本では円谷、さらに最近では社会現象にもなったエヴァンゲリオン……数限りない異形、奇形的なイメージが古今東西で想像されてきた。その造形製作の背景にあるものを戦後日本の芸術表現を通して考えるというイベント。映画、演劇、美術の3つが組み合わされ、複合的な視点から追う。映画では、カラー特撮映画『宇宙人東京に現る』を上映。この作品では岡本太郎が宇宙人をデザインしている。また「怪獣映画と現代美術」と題した椹木野衣(美術評論家)のトークも。演劇では見せ物小屋的怪奇幻想世界を表現した寺山修司作「青森県のせむし男」(長野和文・演出)を上演、これにも高取英(劇作家)の「寺山修司の演劇に見る異形と見せ物性」という講演がつく。美術部門では、円谷作品の「ウルトラQ」に登場したカネゴンなどの美術を手がけた画家高山良策の作品が展示される。 展示「シュルレアリスムの日本的受容 高山良策展」 1月21日(木)〜24日(日)500円 於:アートスペースG(12階) 演劇&トーク 1月22日(金)7:00PM〜 於:愛知県芸術劇場小ホール 映画上映&トーク 1月23日(土)2:00PM〜 於:愛知県芸術劇場小ホール ※映画、演劇2日間通し5000円(前売りのみ) 1日のみ2700円(前売り) 当日3000円
アーティスト:伊藤誠 会場:ガレリア・フィナルテ 会期:1999年1月11日(月)〜30日(土)
1955年生まれ、愛知県出身のアーティスト、伊藤誠。彼はFRP(繊維強化プラスチック)を素材に、円や弧、角度を持った直線的な要素が複雑に絡み合った画的、立体的な作品を制作している。その作品には両面性が存在し、見る側の視覚に対して、多種多様な空間や形態の生成や消滅、変化を提示してくれる。今回の個展では、新作の立体、版画などを展示する。
アーティスト:円山応挙他 会場:徳川美術館 会期:1999年1月5日(火)〜2月7日(日)
明と暗、光と陰の対比や変化によって把握され、表現される立体感や遠近感。色調の変化や大気の揺れ動きなども光によって微妙に変化する。光と陰は芸術を構成する上で非常に重要な要素のひとつである。四季、あるいは朝夕、移ろいゆく光や気象の変化、月影などに心をとめ描かれた絵画、金銀の輝きを用い効果的に光を表現した工芸品など、日本、中国、朝鮮の光を意識した古美術を紹介する。円山応挙の「鯉図風炉先屏風」など、全70余点の展示。
アーティスト:松本俊介 会場:愛知県美術館 会期:1999年1月8日(金)〜2月21日(土)
没後50年を記念した大規模な回顧展。彼が、独自の画風を確立した1935年から晩年までの油彩画91点と素描45点を展示する。青い空間に建物や人の透明なイメージをモンタージュ風に描いた「街」シリーズや人物像、人気のない心象風景などの作品が見られる。戦争が日本の社会に暗い陰を落としていた時代、彼の描く風景には、その時代の人々の不安な信条が描かれているようだ。ルオーやピカソら多様な西洋画を学んだ後、変遷していく作風を楽しみたい。
アーティスト:赤瀬川原平、秋山祐徳太子、一原有徳、スズキコージ、中西夏之、横尾忠則、 四谷シモン、西村益信 他
東京の画廊春秋のオーナーでもあり美術評論家でもある種村季弘がセレクトした作家の作品が並ぶ。上記の通り、バラエティに富んだ人選だ。彼らは、種村言うところの、異端でも幻想でもなく「奇想」の作家。総勢31人。種村は30年にわたって雑誌や画集に発表した文章をまとめた「奇想の展覧会――戯志画人伝」という書籍も発表している。この展覧会も、その本が原型になっているという。なお1月9日2:30PM〜出品作家の谷川晃一、四谷シモンと種村季弘によるギャラリートークが開催される。
アーティスト:トニー・クラッグ
会場:豊田市美術館 会期:1999年1月5日(火)〜3月28日(日)
豊田市美術館の特長のひとつに、コレクションはできるだけ作家の数を絞り込み、一作家複数の作品を収集することで、一人一人の作家の仕事が立体的に鑑賞できるようにする、というのがある。このテーマ展示もこうした方針の上になり立っている。今回は、イギリス人彫刻家、トニー・クラッグ(1949〜)にスポットを当てた。彼は、身の回りのものや素材の成り立ちを生かし物質と生命の進化を洞察する作家だ。廃棄物や漂着物や大量生産品など、ある意味、ゴミのようなものをもとにそのキッチュな色彩を生かし美術品に作り替えてしまう。今回は豊田市美術館の所蔵品立体4点、ドローイング約15点により、科学的視点と豊かな想像力から生みだされる彼の多様な表現を紹介する。
名古屋市美術館で1999年2月から開催される予定の「パリ・オランジュリー美術館展」のチラシが幻のチラシになった。チラシには日本初公開が「はじめての66作品」とうたわれているが、そのうちの1点がすでに公開されていることがわかったためだ。オランジュリー美術館の手違いだったという。名古屋に先駆けてこの展覧会を開いている東京のBunkamuraザ・ミュージアムのスタッフがそれに気付いた。主催者はチラシ10万枚、ポスターを回収、今度は「はじめてがいっぱい」というキャッチコピーのチラシを刷り直すなどの対応に追われている。このチラシ、幻のチラシとしてプレミアムがつくか。ちなみに、すでに日本で公開されていたのはピカソの「白い帽子の女」。
1999年春の中部地区最大の話題は、アメリカのボストン美術館の姉妹館、名古屋ボストン美術館のオープンだろう。ボストン美術館のコレクションを、恒常的に名古屋でも展示しよう、という施設である。日本にいながらにしてボストン美術館のコレクションが見られるというわけだ。場所は、名古屋市街南部のターミナル金山。金山駅の前にある「金山南ビル」の3〜5階が美術館だ。展示室の面積は約1400平方メートル。4月17日のオープン後は、ボストン美術館のコレクションによる年2回の企画展と、5年の長期展示による常設展を行なっていく。第1回企画展は「モネ、ルノワールと印象派の風景」、常設展は「古代地中海の美術」。 ☆講演会のお知らせ 開館に先立ち、小倉忠夫館長が「名古屋ボストン美術館誕生〜新たな日米文化交流を求めて」と題した講演会を2月14日(日)に名古屋市内デザインホールで行なう。 聴講希望者は往復ハガキに住所、氏名、年齢、電話番号、職業と、返信側に住所、氏名を明記し、〒460-0008名古屋市中区栄2-10-19名古屋商工会議所ビル9F 名古屋ボストン美術館へ。一人につき往復ハガキ一枚有効。500人を無料招 待(応募者多数の場合は抽選)。締め切りは1998年1月28日(必着)。 問い合わせ:名古屋ボストン美術館052-223-6632