SNOW PROJECT '99
アーティスト:石崎幹男(写真家)、古幡靖(現代美術家)
会場:札幌大通公園7丁目
HBC広場大雪像前
会期:1999年2月5日(金)〜2月11日(木)、2/8はなし
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開場:21:30〜22:30
問い合わせ先:ギャラリーシード 011561-2720
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世界的にもすっかり有名になった「さっぽろ雪まつり」も50回目を迎えた。今年は2月5日から11日まで大通公園、すすきの、真駒内を会場に300基以上の雪像、氷像が並び、のべ220万人を集めた。普段見慣れた空間に巨大な造形物が出現し、短期間で姿を消すことのみ見ると、下手なインスタレーションよりもパワーを感じるが、どちらかと言うと、この祭りは観光客が中心であり、札幌市民にとっては、市民雪像づくりに参加するごく一部の人や滑り台目当ての子どもたちを除き、あまり関心がないのも事実である。
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古幡靖インスタレーション 1999年
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祭りに不可欠なエネルギーの発散がないのだ。僕のまわりにはここ何年間も雪まつりを観ていないという人があまりにも多い。毎年、アニメのキャラクターや世界各地の有名な建物が精巧に雪で再現されているのであるが、造形的な美しさよりもその技巧ばかり目立ってしまい、あまり代わり映えしないこともその原因のひとつであろう。
会場の各所で芸能人を呼んだイベントやアクロバットスキー、おしるこサービスなどが繰り広げられ祭りを盛り立てるのは例年のことであるが、昨年からおもしろい企画がはじまった。大雪像にビデオ・プロジェクターで映像を映すというインスタレーションである。昨年の古幡靖によるこのインスタレーションは、雪まつりの開催時間が終わって照明が消された後にゲリラ的に(ちゃんと許可は取ってあったが)行なわれたものであったが、今年は、ギャラリー・シードが主催、札幌アリアンス・フランセーズが共催、さらにフランス大使館が後援となって、正式(?)に行なわれる。2/5・6は、写真家の石崎幹男による「FRANCE7 ACT PLAY」と題したスライドショーが、2/7・9・10は、古幡靖による「LINE7」と題したビデオ・インスタレーションである。フランス年にちなみ、大通公園7丁目にはパリのアンヴァリッド・ドーム教会の大雪像がつくられるが、この白い巨大な雪像というスクリーンに、ふたりの芸術家がそれぞれのフランスのイメージを投影する。特に古幡靖は、タイトルからも分かるように、動きのある縞模様を凹凸の雪像表面に映すことによっておもしろい効果を得ていた。なお、LINEの7乗とは、現在がフランス革命から大体7世代目にあたることを意味する。
こうした骨のある企画が雪まつりに連動して増えることによって、「雪まつり離れ」した市民を呼び戻し、ぞろぞろと雪像を見るだけの祭りを脱却できるのではないだろうか。 |
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ACCORDESIGN
アーティスト:パスカル・コンテ(アコーディオン演奏)
イマキュレートコンセプト(端聡+児島美紀)
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会場:札幌大通公園7丁目
HBC広場大雪像前
日時:1999年2月6日(土)19:00〜19:15
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さっぽろ雪まつり関連のイベントをもうひとつ。残念ながら観ることができなかったが、雪まつりの可能性を広げてくれそうなパフォーマンスなので、チラシをもとに紹介したい。イマキュレートコンセプトは、現代美術家の端聡とスタイリストでありデザイナーである児島美紀とのユニットによる美術作品で、ふたりの美術至上主義と従来の服作りのぶつかり合いと融合から生まれたものである。昨年ドイツのコレクションなどで幅広く活動した。今回は、世紀末から2000年を迎えるにあたっての「終わりと始まり」をテーマに、モデル達が芸術としての衣装をまとい雪まつり会場のステージで動きまわり、パスカル・コンテがアコーディオンの即興音楽を演奏する15分間の現代美術としての舞台である。
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ACCORDESIGN
(大通公園7丁目)
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藤木正則展
会場:ギャラリーSEED
札幌市中央区南27条西11丁目1-1
会期:1999年2月7日(日)〜2月28日(日)
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北海道では数少ないパフォーマンスやコンセプチュアルな作品を中心に活動する旭川在住の芸術家。彼自身「行為(KOI)」と呼ぶパフォーマンスや作品を通じて、現代社会における日常に潜むさまざまな問題を、ある種ユーモラスに顕著化させる。なかでも、1978年の《ホワイトライン》は、歩行者天国で賑わう札幌の繁華街のど真ん中の四丁目スクランブル交差点で、運動会などに用いる白線引きを押して走り回り、横断歩道の規則正しいストライプを無数のゆがんだ石灰の線で消し去ろうとしたものであるが、警察沙汰にもなるやら放水車が出動するやらと今でも語り種になっている。他にも、5年間にわたり延べ380人との名刺交換の写真記録を行なった《行為名刺交換》や、レッド・ウーマンと称する女性達が、テープで沿道の駐車中の自動車などをぐるぐる巻きにするパフォーマンスなど、刺激的な行為を繰り返している。
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今回はギャラリー内に3つの小屋を小さな中庭を囲むように放射状に建てている。イスがちょうど一つ入る大きさの小屋の窓からは、隣の小屋の窓と中庭を囲う塀と地面だけしか見えない。それぞれの小屋には実際に電話線が引かれているが、ジャックまでで電話もファクスもモデムも繋がれていない。しかし、実際にこの閉ざされた空間のなかに入ってもそれほど疎外感を感じさせないのは、外と繋がっているという安心感を与えるこの電話線のせいなのかもしれない。作者がこの作品について「情報社会にあって日頃等身大のリアルな関係を感受できる場として、neighbors/neighborhood(お隣さん)みたいなものを取り上げてみたい」と述べているように、物理的に近いお隣よりも、電話線を通じてのコミュニケーションが重んじられている現代社会が痛切に象徴されている。
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井上まさじ展
会場:ギャラリーミヤシタ
札幌市中央区南5条西20丁目
会期:1999年2月17日(水)〜3月21日(日)
開廊:9:45〜17:00、休館日=月曜日
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問い合わせ先:011-562-6977
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井上まさじの近年の作品は、大きく二通りに分けられるだろう。昨年の10月から芸術の森美術館で開催されていた『北の創造者たち'98――平面の断章III知覚される身体性』では、展覧会のテーマに沿って「描く」という身体的行為に焦点を当てたため、極細のペンによる小さな円や点、同心円、平行な直線などでそれぞれ画面を埋め尽くす仕事のみが紹介された。人間がこれ以上小さく描くことができないだろうと思われるほどの小さな円などで正確に規則正しく描かれながら、そこに生じるわずかな揺らぎが濃淡をつくりだし、極度の緊張感を維持しながら進められた膨大な時間と、その時々の井上まさじの精神的肉体的せめぎ合いを強く感じさせた。
今回の個展では、井上のもう一方の仕事である、丹念にローラーで絵の具を塗り重ねることによって生じる黴のような微細な突起が画面を覆う作品が出品される。絵の具の物質的面と、行為の蓄積が織りなす繊細な作品である。
1986年以来、札幌の同じ画廊で年1〜2回発表を続けているが、彼の仕事は、1996年のワルシャワの個展と1996-97年の道立の美術館の共同企画展で帯広、旭川、函館に巡回したほかは、札幌以外でほとんど紹介されたことがなく、もっと多くの人に知ってもらいたい作家の一人である。
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岡部昌生展「被爆した広島旧宇品駅プラットホーム」
会場:TEMPORARY SPACE
札幌市中央区北4条西27丁目
会期:part1:
1998年10月5日(月)〜10月31日(土)
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part2:
1998年12月28日(月)〜1999年2月20日(土)
part3:
1999年2月22日(月)〜3月31日(土)
開場:10:00〜17:00、休館日=日曜日、12/30-1/3
問い合わせ先:011-631-7555
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1970年代後半に廃線となった旧国鉄宇品線は、日清戦争開戦の1894年に、軍港である宇品港に繋がる軍用鉄道として急ごしらえされたものである。その終着駅の広島旧宇品駅の560mに及ぶ花崗岩のプラットホームには、兵士や軍需物資が行き交った記憶が染み込んでいる。そして、1945年8月6日には原爆がこの地を襲う。戦争に明け暮れた時代の証人ともいえる広島旧宇品駅プラットホームは、湾岸道路建設によってその姿を消そうとしている。岡部昌生は、1996年から4度にわたってアエログラム(航空書簡)に鉛筆でフロッタージュを行ない、その500通以上を各地の知人や美術関係者に発信した。いずれも石と石の隙間が擦り取られており、人、時代、場所などの隔たりとそれらの結びつきを暗喩しようとする意図も伺える。今回の展覧会では、返送されたそれらと反転した写真が受信者のサインを添えて、3つの会期に分けて展示している。
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リーセント6周年記念ドローイング展「ende/neu」
会場:リーセント美術館
札幌市中央区北1条西28丁目2-5
会期:1998年12月12日(土)〜1999年2月10日(水)
開館:12:00〜18:00、休館日=月曜日、12/30-1/7
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入場料:300円
問い合わせ先:011-613-7444
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リーセント美術館が現在の場所に開館したのは1996年秋のことであるが、場所を数回移りながらリーセントギャラリーとして活動していた時期を含めると6周年を迎える。常に先進的な現代美術だけに絞り活動を続けてきた札幌では貴重な存在であり、アートスクールを開いて次世代を担う芸術家の育成に努めるなど、札幌の現代美術を語るうえで無視できないまでに成長したことは誰もが認めるところだろう。今回は、これまでこの美術館で発表経験を持つ、あるいはこれから展覧会を予定している芸術家約30人に呼びかけ、それぞれドローイングを1点ずつ展示している。展覧会タイトル「ende/neu」は、終わりと始まりを意味し、今世紀から21世紀への世紀の変わり目に位置するなかでの各作家の取り組みを見せようとしている。小品が中心であるが、リーセントがこれまで行なってきた活動を思い出させる企画であった。
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オーストラリアの現代工芸
会場:北海道立近代美術館
札幌市中央区北1条西17丁目
会期:1999年2月6日(土)〜3月14日(日)
開館:10:00〜17:00、休館日=月曜日、2/11
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入場料:一般930円/高校・大学生570円/小・中学生360円
問い合わせ先:011-644-6881 テレホンサービス011-612-7000
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展覧会名が示すとおり、オーストラリアの現代工芸を紹介するもので、日本ではこれが初めての本格的な展覧会となる。オーストラリア独自の風土や社会性を反映したものやアボリジニ芸術の伝統を受け継いだものなど、多彩な表現が見られる。オーストラリアの工芸デザイン活動の中心的存在であるパワーハウス・ミュージアム(シドニー)との共同企画であり、工芸、ガラス、ジュエリー、金工、染織、木工などの各分野で注目される55作家137点の作品を展示する。
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芸術の森美術館コレクション選'99―北の木彫と風景画
会場:芸術の森美術館
札幌市南区芸術の森2丁目75
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会期:1999年1月30日(土)〜3月30日(日)
開館:9:45〜17:00、休館日=毎週月曜日
入場料:一般300円/高校・大学生150円/小・中学生60円
問い合わせ先:011-591-0090
URL:http://www.artpark.or.jp
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雪に覆われてしまう冬の北海道では美術館の来館者が激減する。このため、各美術館では冬期間にさまざまなアイデアを凝らして集客に努めてきたが、経費と労力をかけた割には来館者が一向に増えないのも事実である。経費削減と収入増が求められる昨今の美術館事情では、夏場に大きな展覧会が集中し、冬場に経費が比較的かからない所蔵品を中心とした展覧会を開催する美術館が少なくないのもいたしかたないことなのかもしれない。本来、美術館ではその活動方針に沿った調査・研究に基づいた作品収集を行ない、それらを的確に展示していくことが最も重要な活動であろうが、芸術の森美術館は展示室がひとつしかなく常設展示室を持たないため、収蔵品の展覧会が冬場に追いやられ、冬にしか収蔵品が見られないのは何とも歯痒い。
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この美術館のコレクションの特徴は、豊かな自然環境に現代彫刻を設置した野外美術館に呼応した形での、国内外の近代から現代に至る彫刻の流れを綴る系統的な収集と、札幌ゆかりの画家の作品である。今回は、砂澤ビッキ、富谷道信、本田明二、米坂ヒデノリという4人の北海道の彫刻家の木彫と、札幌ゆかりの画家による風景画などを合わせて46点展示している。
なお、北海道立旭川美術館でも3月20日まで「旭美(ウチ)のお宝」と題してコレクション展を開催している。
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