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関東エリア展覧会/イベント情報 嘉藤笑子
contents
 展覧会
   昭和40年会巡回展 / 「Up above the World」
   奈良美智「in the Floting World」 / 「消滅する記憶」ブルース・ヨネモト
   「第13回写真3.3m2(ひとつぼ)展」
 イベント
   「ダブル・ポジティブ」 / 「ふしぎの国の歩き方」村上隆&Hiropon Show
   バルーンアートフェスティバル「Hot Air」
 トピックス
   書籍『岡本太郎に乾杯』新潮社
 
Eventオープン・スタジオ
「ダブル・ポジティブ」

企画展出品作家:荻野僚介、笠原出、佐藤勲、須田悦弘、田代悦之、彦坂尚嘉

  日時:1999年5月1日・2日3〜9pm
  会場:スタジオ食堂


オープン・スタジオ 「ダブル・ポジティブ」1999年から参加アーティストによる運営母体にシフトしたスタジオ食堂が久しぶりに展覧会とパーティを開催した。今後は、年2回のペースでイヴェントを交えたオープン・スタジオを開催するということだ。この秋には、スタジオ食堂も参加する立川市のアートフェスティバルが予定されていて、地域とのコミュニケーションをアートを通じて促進していくことにもなっている。
スタジオ内には、立派なギャラリーがあって、今回は真島竜男のディレクションで6人の作家による企画展「ダブル・ポジティブ」を開催された。平面、立体、写真、ヴィデオ、自作のアイスクリーム(購入できる)などが展示された。もちろん、スタジオ食堂のアーティストの個々のスタジオも仮設の展示会場になっていて、それぞれの新作や近況に触れることができる。
日本では、スタジオの大きさや立地環境などの条件が満たされていないため、まだまだオープン・スタジオはめずらしいことだが、欧米では頻繁に行なわれている。若手や無名のアーティストにとっては、自分の作品を無条件に見せることができる良い機会だし、観客にとっても、美術館や画廊と違った環境で、アーティストに直接に出会えるうれしいチャンスなのだ。そういった意味でも、こうしたケースがどんどん増えていってほしいものだ。
そのほか、ふたりの外国人アーティストが新しくスタジオに参入して、より国際的な活動になろうとしているようだ。観客もかなり国際的な顔ぶれだったし、ペットも参加して和気藹々の雰囲気だった。

なお、5月22日にもまた、ちょっと変わったアート関係のパーティがある。“嫁入りアンデパンダン展”と題された新川貴詩/祥子両氏の結婚パーティに一般参加の展覧会をくっ付けて、ユニークな祝賀会を開催するもの。“いかなるものにも美術の門を解放する”ということを唱った「読売アンデパンダン」をリメイクするものだが、ふたりをお祝いする気持ちを誰でもアートに込めて展示できる趣向だ。こんなに楽しいかたちでおめでたい席を祝ってもらうなんて、花嫁・花婿にとっても美しい門出じゃないですか。
Exhibition昭和40年会巡回展
「東京からの声」凱旋帰国展
 

出品作家:会田誠松蔭浩之、土佐正道(明和電気)、大岩オスカール幸男、小沢剛、パルコキノシタ

  会期:1999年3月27日〜5月8日
  会場:現代美術製作所
  問合せ先:03-5630-3216

昭和40年会巡回展 「東京からの声」凱旋帰国展
昭和40年生まれだからという理由だけで結成されたアーティスト集団“昭和40年会”。97 年には、この海外展への出発前に東京で記者会見まで行なわれて、華々しい欧州巡回を敢行した。あれから約2年、バルセロナ、ローザンヌ、ワイマールと3カ国の3都市を巡り、それぞれ大きな反響を得たようだ。
たまたま第1会場となったバルセロナでのオープニングに訪れたこともあって、アーティストたちと交流を深めるきっかけとなった。みな酒を愛する芸術青年たちである。同年齢というだけで集まってしまうというのは、アーティストだけに限ったことではないことだ。むしろ、個性豊かなアーティストが年齢にこだわるなんてという気持ちもあるが、作家たちもやはり人間同士。同級生のような雰囲気でなんでも言い合えるということは、自分たちを活性化できるかけがえのない仲間といえるのだろう。
しかし、これが芸術運動として今後の美術界に影響力を持ち、何か重大なアートムーヴメントを創造していくということはなさそうだ。もちろん、そのような大層な計画のために結集されたわけではないのだが、組織的には、男性ばかりで女性のマネージャーが、作家たちのこまごました世話役をしているのが、ちょっと時代錯誤的な体育会系を彷彿させている。
Exhibition「Up above the World」

出品作家:朝岡あかね、斎木克裕、ナカイメグミ

会期:1999年4月8日〜4月30日
会場:ギャラリー日鉱
  問合せ先:03-5573-6644


「Up above the World」 ギャラリー日鉱では、定期的に日本の若手を中心にした現代美術を意欲的に紹介している。今回は、「Up above the World」と題されたそれぞれ異なる手法とテーマを持った3人の作家展。このギャラリーは、曲面ガラスを持った円筒状の珍しい建築で、そのため展示用の壁面が設置しにくい難しい空間である。そのため今回は、中央にパーテーションを設けて、3人の作家がそれぞれ独立した空間で展示できるようになっていた。
朝岡あかねは、日常の夜景の中に浮かび上がる照明を星に見立てて、都会の風景のなかに星座を描く写真作品である。今回は、会場が丸の内の企業のギャラリーということもあって、サラリーマンに見なれた東京の街がモチーフとなった。毎日、彼らが見なれている都会の殺風景な情景に光を繋ぐ線を引くだけで星座が生まれるというのは、新鮮な驚きだろう。
斎木克裕は、ミニマルな色彩と構成によって表現される写真作品を制作している。一見するとコンピュータ・グラフィックスでデジタル処理によって加工しているように思うが、ステンレスフレームの立体を繊細なライティングで丁寧に撮影した写真作品なのだ。画像処理では得ることができない視覚を欺かないリアリティがそこには存在する。
ナカイメグミは、夜店などで売っているゼンマイ仕掛けで動く犬のおもちゃに、数えきれないほどの目玉がつけて別な生き物のようにした作品を展示した。可愛らしいぬいぐぬるとして単純に誰にでも受け入れられる存在を、目玉のおばけのような異様なものに変容することで、通常の人間の価値観を裏切り、実体のない常識の領域を刺激させている。
Event「ふしぎの国の歩き方」村上隆&Hiropon Show 

会期:1999年4月23日〜5月9日
会場:渋谷パルコパート1 8Fパルコギャラリー
入場料:\500(一般)\400(学生)

「ふしぎの国の歩き方」村上隆&Hiropon Show 
今回の大掛かりな村上隆展は、まさしくゴールデンウィークのアート・イヴェントとしてぴったりのプロジェクト村上隆のオリジナルキャラクター「DO B君」ワールドをパルコ全館を使って展開し、インテリア、Tシャツ、キャラクタ-グッズにいたるまで詳細に商品化が進められている。
かつて村上隆が「この腐りかけてる東京を壊していかなければ次が生み出せない」といっていたことが頭にぼんやりと浮かぶ。DOBラー(と勝手に呼称を付けたが)たちを単なるファンとして留めずに、彼らも村上のアートワールドに引き込んでしまうところが、この人が単なる現代美術作家ではなく、カルチャーシーンを牽引している魅力なのだろう。なにより彼はエネルギッシュに活動し、アーティストを孤高のクライマーのように雲の上に持ち上げたりしない。そんなことを望むのであれば、学生時代に志した画壇のなかに沈めばいいのだから。
Exhibition奈良美智「in the Floting World」

会期:1999年4月2日〜5月10日
会場:NADIFF
問合せ先:03-3403-8814


奈良美智「in the Floting World」現在ケルンをベースに制作を活動する奈良美智は、このところ頻繁に個展やグループ展などで活躍している。もはや村上隆と並ぶ現代美術界のスーパースター的な存在で、ちょっとユーモラスでやさしさのある奈良の描く子どもや動物は、若者のこころを捕らえてしまったらしい。
しかし、奈良は世紀末社会現象を子どもの目を通して表現することで独特のアイロニカルな視点を露出させている。どちらかといえば、性悪で邪気なこどもの世界が現代社会の縮図のように、切実に迫ってくる。可愛らしい子どもや犬といった身近なモチーフであるからこそ、なおさら描かれている世界が毒気に包まれてせつなさが込み上げてくる。
今回は、浮世絵の代表作に奈良キッズを絡ませて、果敢に歴史に挑戦している。江戸町人文化のなかでローカルチャーであったけれど、もっとも人気があった浮世絵。自らの絵画をそうした現代版町人文化とリンクして、新たな歴史のなかに認知させようとしているのだろうか。もはや、平成版人気絵師にはなっているのだが。
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