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キュレーターノート
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森 司
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第7回:2001.1.1~
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1月1、2、3日(月・火・水) 年始休暇で全てお休み。実家に帰省しそこから戻り、親戚を訪ねたら、お正月三が日は終了。 1月4日(木) 御用始め。職場に出て頂戴した年賀状を見る。おっといけない!あの方にも、この方にもお出ししていない(この場をお借りして、本年もよろしくお願い申し上げま す)。年賀状の整理に勤しむ。 1月5日(金) 森脇裕之氏来館。2月10日~5月6日までの会期で開催する開館10周年記念事業「宇宙の旅」展に出品する森脇さんが会場の最終確認、その他打ち合わせのために来館。クリテリオムでかつてお世話になった間柄。旧交を温めるべく、打ち合わせ後にお店に 出向く。勿論、紅白の裏場内、サッチャンの巨大衣装の制作秘話と話題に事欠くハズもなく、楽しい席となる。 1月6日(土) 土曜日の休日当番で水戸芸術館。 1月7日(日) 作家に会う。昨年暮れ作品を見て欲しいとのメールをもらった。お断りする理由が特にない限り原則、作品を見せていただくことにしている。2月10日にクリテリオム45でご紹介する岩城直美さんも、人伝に僕のことを聞き、会ったらよいと勧められたと言ってわざわざ水戸まで来てくれた。東京から軽く1時間。往復5千円はかかる 足代。失礼のないように1時間は必ず時間をとるようにしている。今回はいろいろ見 せていただいて約90分。こんなところが双方にとって限界。真剣勝負でそれなりにかなり疲れる。先方はもっと疲れていると思う。訪ねて頂けるありがたいと常々思う。 1月8日(月) 成人式。成人式は何故か天候に恵まれないことが多く、1月15日が成人式の時も そうだったが、晴着姿のお嬢さんが足下不案内に道行く映像がことしもお約束のようにTVに流れていた。2回目の成人式てこともないが、もうワンクール終わると赤 いちゃんちゃんこを着る歳になる。ソニーの出井会長は、そのお祝いに赤いポルシェを買われていた。2020年とはどんな時代でどんな社会になっているんだろう。 あっと言う間に来ちゃうだろうな。 1月10日(水) 茨城大学にて「アートマネジメント」の講義。集中講義の2日目。前回講義した内容 のコピーを配り、何本かビデオを見せる。部門会議を終えて駆けつけ、講義を終えて芸術館に戻ると「宇宙の旅」展のチラシが届いていた。 1月11日(木) 東京造形大学にて授業。「宇宙の旅」展のチラシが納品になっていたので、チケット とチラシを配って、ひとしきり展覧会について話した後、学生らは既にレポートの提 出も終えているので、ちょっとばかり実務的なお話をして差し上げようと、展覧会開 催までに要する時間の流れに関するお話をする。実務が全てではないけれど、実務を 知らないとできないことや発想できないこともある。そんなことを知っていて欲しい。岡山の文化NPOミーツのマネジメント講座で、印刷会社の視察を実施したことがあ る。機械を前に、ここまでの直しなら無料で出来て、ここからだと大変でさらにお金 もかかる、このタイミングを逃すと直しは利かないということを現場で見せ、入校から校 正、責了、納品までの流れを肌で感じてもらおうとするものだ。百聞は一見に如かず で見せるが勝ち。秀逸なプログラムだと感心したことがある。 1月12日(金) 水戸芸術館で終日勤務。息抜きに展覧会会場に出向き、ちょっとばかりゲームに勤しむ。ゲーム展はおかげさまで様々な媒体で取り上げていただいている。掲載誌として送 られてきた『Men's Ex』2月号をぱらぱら見ていたら、同展主謀者の一人である桝山寛氏がインタビューに応えているところが顔写真入りで掲載され、その写真脇のプロフィール欄に〈最近の仕事「巨人のドシン1」〉と書いてある。そこで初めて知りました、 あのゲームは桝山さんのお作りになられたゲームなんですね。というわけで、監視を しているフェイスに指導を受けて「巨人のドシン1」を体験しました。 1月14日(日) 水戸芸術館で終日勤務。サルブルネイの松本弦人氏(ゲーム展の広報物とカタログデザインを担当)が展覧会を見に来る。お昼前のハズが、諸般の事情で夕方になっての登場。かねてから開発を続けていたテレビゲーム「動物番長」がようやく本当に終わり、幾分痩せた印象を受けたが、以前のように疲れが溜まっている感じではなく、健 やかに元気そうだった。展覧会場を調査した後、水戸のゲームセンターの調査に意気ようよと出かけて行った。つくづく人生を楽しむ人だと思う。 1月15日(月) チェルノブイリ原子力発電所。昨日の新聞を片づけようとしたとき、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所の廃炉作業が昨年12月15日過ぎから始まっている記事が目につく。最悪の放射能漏は15年前の事故だ(1986年4月26日)。で、職業 柄、チェルノブイリと聞くと、ついアトムスーツに身を包み、この地――「未来の廃 墟」――を訪ねたヤノベケンジの作品を思い出す。MOTの「ギフト・オブ・ホープ」 での出品作品に、野次られたアトムスーツ姿の彼を『遠方からのお客様だよ』と、年輩の婦人が窘める(言い返す)スケッチが展示されている。その作品は妙に記憶にすんなり入って居座っている。「日本ゼロ年」の時には、『なかなか作品に出来なくて』と口 にしていたと記憶するが、そのザラとした生っぽさがリアルだったせいかもしれない。 1月17日(水) 兵庫県南部地震――と、今は記述される阪神・淡路大震災は1995年の今日午前5時 46分発生し、6433人の方が亡くなられた。この時の民間支援活動であるボランティアが、98年12月1日施行されたNPO法(特定非営利活動推進法)に繋がる。 アートの世界はこの法案がもつ可能性を生かし切ることができるのだろうか。 1月18・19日(木・金) 水戸芸術館で終日勤務。取り立てて記録することもない。隠って急ぎの用件と格闘。 1月20(土) ブッシュ新大統領就任式。アメリカ第43代大統領に共和党のジョージ・ウォーカー・ブッシュ氏(54歳)が就任するのをCNNで何となく見る(正確に言えば深夜で21日未明 なのだが)。クリントン大統領の就任時のキーワードはチェンジだった。ブッシュ新大統領は「子供たちの心に知性と品格を育てなければ、彼らの才能は失われ理想主義はむしばまれる」と演説した。「礼儀、勇気、思いやり、品性」といった基本原則をもって国政運営にあたると言う。日本の政治家は? 先の成人式では新しい大人が式典で暴れる騒動が各地であった。そして、子どもたちが加害者となり、被害者 となる悲惨なニュースが後を絶たない。暢気な自分も、どうなる日本って気にさせられる。 1月23、24、25日(火・水・木) 水戸にて勤務。23日午前中、部門会議。24日午後は茨城大学に3回目の講義に出かける。学生の課外授業としての展覧会見学日を、2月12日午後2時からにする事を学生と決める。ゲーム展をまだ見ていない学生にとにかく見てみてと話して、2コ マの講義を終えて館に戻って、程なくしてからギャラリーを歩いていたら、先ほど授業をした学生が展覧会を一人見ていた。 1月26日(金) 明日の土曜日は休み、日曜日から作品集荷に出るため、今日が個人的なゲーム展最終日となる。というわけで攻略をすすめてきたゲームに最後の挑戦。首尾良く初攻略。 始めた頃はどうなることかと思っていたけど、どうにかこうにかクリアーできるようになった。超個人的にハッピーエンドのゲーム展。 1月27日(土) 雪が降る。この地域としては多めの雪の量だ。羽田の飛行は欠航しているとニュースが伝えている。幸い出かける用事もなく家で過ごす。ニュースは、インド西部地域、 グジャラート州ブジを震源地に大地震が発生し甚大な被害が出ていることを伝えてい る。被害者は10万人にも及ぶかもとのこと。一つの町が壊滅したことを意味する。 東海沖地震がこないことを祈りたい。 1月28日(日) テレビゲーム展終了。作品集荷のために名古屋に向かう。常磐線沿線には、昨日の雪が残り、見慣れた風景がいつもと異なって見える。雪化粧とはよく言ったものだ。幸 い列車の遅れもなく順調に目的地に着く。 1月29日(月) 作品集荷。「宇宙の旅」展の作品の借用に伺う。名古屋市内で朝一番の集荷を済せ、 豊田市美術館に。ここから岐阜のIAMASに向かう。途中、雪のために一般道に出る出口 で長い渋滞になっている箇所を脇目にする。雪の多い関ヶ原まで後わずかのところに 位置する大垣はかなり冷え込む。夜は名古屋市内に戻り、野村仁展巡回先の豊田市美 術館学芸の金井氏らと水炊きで暖まる。 1月30日(木) 何も見ていないゾ!気がついたら1月も終わり、なのに展覧会をまともに見ていな い。気になる展覧会がいくつかあるが最終日まで間があるので安心していたら今月は何も見ないで終わってしまった。 1月31日(水) 12時30分チラシ納品。3月6日スタートの水戸市にある国際交流協会で開催する〈旅先で訪ねたい美術館〉の連続講座のチラシが納品された。この企画は好評で、水 戸市の市報に載せた告知だけで、予約受付初日に35人の申し込みがあったそうだ。 今日で50人を超えたと聞いた。会場キャパいっぱいまでは受け付けると担当者の弁。プログラムを組んだ自分としては嬉しい限り。 |
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[もり つかさ 水戸芸術館現代美術センター学芸員] |
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