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スクリーンを知る
日本画質学会第5回研究会報告
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「スクリーン」――誰もが知っているし、時には「シーツでも十分」と軽んじられているほどだが、実はこのスクリーン、映像の出来映えを左右するほどの隠れた実力者なのである。
まず、スクリーンには大きく2つのタイプがある。一つが映画館のように前面から投映して反射させるタイプと、後方から投映し透過させながら像を映し出すタイプに分けられる。前者をフロント投射用、後者をリア投射用という。リア投射用は、全国のハイビジョンギャラリーでも数多く使用されており、スクリーンの裏面がブラックボックスとなる。フロント投射用は、「スクリーにシーツでも……」といわれるほどに一般的であるが、これまでプロジェクターの性能は語られてもスクリーンそのものへの関心は決して高いものではなかった。
このフロント投射用のスクリーンについての研究会が、9月1日、日本画質学会の第5回研究会として、(株)オーエスの協力で開かれた。
フロント投射のスクリーンは、プロジェクターから投映される光を反射させるため、反射の仕方はスクリーン上の白い面をどんな材質で作るかによって働きが変わってくる。そのため生地にはさまざまな材質がある。現在は、パール、ホワイト、ビーズの3種が主流。四方八方に光を撒き散らすという一般的な性質をもつのがホワイトで、光の入ってきた方へそのまま送り返す回帰性のあるのがビーズ、入ってくる光の方向とは反対方向に反射させるものがパールとなっている。
研究会で、この3種を同一条件下で検討した結果、「ホワイトは電子映像をフィルム化する感じで、シアター向き。パールは万能型で、バランスがよい。ビーズはビデオ映像向きで、シャッキリとしたキレのある映像に向く」というものであった。
美術館内での様々なイヴェントや講演などにフロント投射のプロジェクターを使用する際は、プロジェクターのセットだけでなく、スクリーンにも配慮したいものである。 |
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好評を博す「法隆寺献納宝物デジタルアーカイブ」システム
東京国立博物館
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(C) Photo: New Media
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昨年7月に新しく開館した法隆寺宝物館は、開館記念展(7月20日〜8月29日)に12万5000人を集めて話題になったが、その折にも大きな反響を呼んだ資料室の「法隆寺献納宝物デジタルアーカイブ」システムが、来館者の好評を博している。新宝物館は、宝物の保存と公開展示という二律背反する双方の目的に応えるコンセプトで設計されている。外光がコンクリートと石の壁で遮断された展示室と収蔵庫。一転してロビーやラウンジ、資料室では、豊かな借景に囲まれながら作品鑑賞の余韻に浸れるのである。「法隆寺献納宝物デジタルアーカイブ」システムは、まさに作品鑑賞の余韻に浸りながら、さらに深く作品と交歓する場でもある。クライアント数は12。来館者は、各席の独立性が保たれたデスクで思いのままに古代美術の宝庫に遊べるのである。
さてシステムの最大の特徴は、日、韓、中、英、仏の5カ国語対応のマルチリンガル型アーカイブ。タイトル画面で希望の言語を選択すると、以降のナビゲーションは選択した言語で表示され、ナレーションで作品解説を聞くこともできる。その他、高精細画像による自在な拡大機能、立体作品を回転させながら鑑賞できる機能、さらには専門的な研究資料(なんとB5版換算で約2000頁!)も検索できるなど、魅力は尽きない。情報処理振興事業協会の先導的アーカイブ映像制作支援事業として制作されたとはいえ、美術館や博物館に求められる情報公開のひとつの理想形が実現している、といえるだろう。なお法隆寺宝物館の設計は、谷口吉生氏、コンテンツの全てを収録した「DVD-ROM版法隆寺献納宝物アーカイブ(38万円・税別)」も販売されている。
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