国立西洋美術館展示室入口に
設置された大型ディスプレイ
|
現在、国立西洋美術館で開催中の「イタリア・ルネサンス−宮廷と都市の文化展−」は、プラズマディスプレイ(以下、PDPと呼ぶ)が美術展に導入された好例である。同展は、「日本におけるイタリア2001年」のオープニングを飾る展覧会で、イタリア美術、歴史、文学の黄金時代を、「ルネサンスの創造」「新たな芸術規範の広がり」「円熟期のルネサンス」「16世紀宮廷文化の栄華」の4つのテーマで紹介し、約180点を展観している。
PDPは展示室入口に設置され、この4テーマを4章で構成した展示概要を映像で紹介している。50インチの大画面、椅子も置かれているので、ちょっとしたシアターだ。PDPの特徴のひとつに、明室でも鮮明な映像が表示できることがあげられる。つまり、空間を暗くする必要がないので、PDPは通常の照明の下に置かれている。
また、高精細映像も特徴のひとつ。展示作品に小さなカメオがあるが、実際の展示では細部まで鑑賞しづらい。しかし、高精細な大画面のPDPでは、細部まで鑑賞することができるのである。もちろん、本物のカメオはあるわけだから、本物の力は本物で感じて、PDPはその鑑賞を助ける役目だ。
このようなディスプレイやモニタを使った映像展示は以前からあり目新しい手法ではないが、PDPの普及と同時に、PDPの特徴を活かしたものが目立ってきた。昨年、東京都美術館で開催された「モナ・リザ 100の微笑」展でも、PDPが活用された。
同展は、「モナ・リザ」を主題とする古今の作品約100点を紹介し、アーティストたちが提起している芸術創造のありようを探るものであったが、残念ながら(当然か)、主題そのものであるダ・ヴィンチの「モナ・リザ」の来ない「モナ・リザ」展だった。展示は東京都美術館の数フロアに渡り、上階へいくための階段付近にPDPが「縦形」に設置され、主題であるダ・ヴィンチの「モナ・リザ」の作品を解説した映像が流された。来場者は、一呼吸置く感じで、本物の「モナ・リザ」を鑑賞して上階へ行く。
今回紹介した2つの展覧会では、展示というソフトとディスプレイというハードとが、うまく機能し合っていたが、大型ディスプレイを展示に持ち込む企画は、まだまだ過渡期だ。PDPの普及が、従来の美術展示に、どのような新しい局面と魅力ある映像展示をもたらすのか期待はつきない。(DNPアーカイブ・コム 長谷部敏子) |