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美術作品と著作権(2)――いかなる団体が、どのような機能を果たしているか
 
美術作品を利用するにあたり、使用者が著作権者(作家や遺族)と直接連絡を取って許可を得るという形が、最も基本的な著作権処理の方法かもしれません。しかし、現実には、そのようなことを個々の使用について行っていたのでは、著作権者にとっても煩わしく、また、使用者にとっても事務的な処理が行われにくいためマイナス面が多すぎます。まして、著作権者と使用者が別々の国に在住する場合は尚更です。

したがって、著作権者と使用者の間を橋渡しする仲介役が必要になります。この仲介役の代表的なものが、著作権管理団体です。次に、現在の日本で、美術著作権の分野に、どのような管理団体があり、どのような機能を果たしているかを簡単にご説明します。

美術の分野における著作権管理の現状

1995年、日本美術著作権機構(略称APG‐Japan)という組織が、日本美術家連盟、全日本写真著作者同盟および日本グラフィックデザイナー協会により設立されました。設立の趣旨は、マルチメディア時代に対応するため、視覚芸術に関する著作権管理体制を整備する、というものです。

このAPGが、1999年11月にCISACという国際組織(音楽、文芸、演劇等様々な分野の著作権管理団体により構成される)に加盟しました。海外作家の著作権については、従来、美術著作権協会(略称SPDA)がADAGP(フランス)、BILD−KUNST(ドイツ)、ARS(アメリカ)等、海外の17の著作権管理団体の日本代理として管理業務を行っていましたが、APGがCISACに加盟したことに伴い、それらの団体の多くが日本における代理権を、今年の1月以降、SPDAからAPGに移行させました。

その結果、現在では、14の団体に所属する海外作家の著作権をAPGが管理するようになりました。しかし、一部の管理団体や、ピカソ、マチス、シャガール、リキテンスタイン等の権利継承者は、日本における著作権管理を引き続きSPDAに委ねています。

もちろん、管理団体に加盟することは義務ではありませんから、現存作家(特にアメリカの作家)にしばしば見られるように、管理団体には所属せずに、画廊や弁護士を通して、あるいは、作家本人が直接、著作権問題に対応しているケースも多々あります。つまり、APGでもSPDAでも扱わない作家が数多くいるわけです。それらの作家の作品を使用する場合、使用者はその都度海外に問い合わせをしているというのが現状です。

管理団体が2つになったために取り扱い作家が増えて使用者にとって便利になったというわけではなく、SPDAが扱っていた作家に関する窓口が2つに分かれてしまい、かえって手続きが煩わしくなった、というのが私の感想です。

一方、日本美術の著作権については、横山大観等、ごく限られた数の作家に関して日本美術家連盟が管理業務を行ってきましたが、数多くの作家の著作権をまとめて管理している団体はなく、APGが出来た現在でもこの状況は変わっていません(ただし、APGは、今後、日本作家の著作権を集中管理することを目指しているようです)。したがって、日本作家の作品を使用する場合には、作家ないし遺族を探して個別に連絡を取らねばなりません。弁護士や画廊が著作権管理を委ねられていることもありますが、大半の場合、作家や遺族が個人的に対応しているのが現実です。場合によっては、使用者と著作権者が直接コンタクトした方が良いこともあるでしょうが、たとえば、美術館の所蔵品図録や展覧会図録に作品を掲載するために、多数の著作権者から個別に許可を得て、それぞれに個別に使用料を支払うという作業は非常に効率が悪いといえます。

現在文化庁が推進しているJ-CIS(Japan Copyright Information Service Center)は、著作権使用許諾の申請先がどこなのかという交通整理をネット上で行うというものです。問い合わせ先がすぐに分かれば、使用者としてはとても助かります。しかし、その先の手続きに関しては相変わらず使用者が行うわけですから、少なくとも美術の分野では従来の状況を一変させるものではありません。

私が在籍する株式会社DNPアーカイブ・コムは、APGとSPDAが扱わない海外作家および日本作家の著作権も含め、美術著作権の処理代行業務を行っています。これについては、当社ホームページの「ライセンス関連」の項目に詳述されておりますので、ご覧いただきたく存じます。

次回は、美術作品を使用する現場で実際にどのような問題が生じているか、著作権に焦点をあてつつ、具体例をご紹介します。


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